第二百十一話 磨上原の合戦その四
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「わかったな」
「はい、では」
「うむ、進めるぞ」
その戦をというのだ。
「よいな」
「はい、では」
細川はすぐに応えた、そしてだった。
彼は騎馬隊の主力を伊達の鉄砲騎馬隊に向けた、その鉄砲騎馬隊を率いる政宗は両軍の先陣同士が戦いに入ったのを見た。
それを見てからだ、政宗は己が率いる兵達に言った。
「戦がはじまったわ」
「それではですな」
「我等は」
「このまま敵の横っ腹に突き進むじゃ」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「いつも通り鉄砲を放ち」
「それを繰り返したうえで」
「必要とあらば刀を抜きじゃ」
鉄砲を置いたうえでというのだ。
「よいな」
「敵陣に切り込み」
「そうして」
「織田信長の本陣までじゃ」
まさにそこまでというのだ。
「行くぞ」
「そして織田信長をですな」
「捕らえて」
「あの者を捕らえればじゃ」
それで、というのだ。
「褒美は思いのままじゃ」
「おお、褒美はですか」
「思いのままですか」
「それではですか」
「我等が織田信長を捕らえれば」
「伊達の天下となるからな」
それだけにというのだ。
「領地も思いのままぞ」
「では百万石もですか」
「まさに」
「百万石でも何でもくれてやるわ」
政宗はあえてこう言った、兵達の士気を鼓舞する為にもだ。政宗は本能的にそこまで考えて言ったのである。
「それこそな」
「では、です」
「織田信長はそれがしが捕らえます」
「いや、それがしが」
「それがしがです」
兵達は政宗の狙い通りに士気を上げた、そして。
そのうえでだ、政宗の采配に従いだった。
一直線に向かう、しかし。
ここでだ、織田の騎馬隊がだった。
伊達の鉄砲騎馬隊の前に出て来た、その騎馬隊はというと。
「ほう、御主がか」
「左様、柴田勝家でござる」
柴田は騎馬隊の先頭に立ち政宗に答えた。
「織田家の家臣の一人にございます」
「その武名は聞いておる」
政宗はにやりと笑って柴田に応えた。
「織田家きっても猛将とな」
「そう言って頂けると何より」
「しかしその勇名もじゃ」
それも、というのだ。
「わし相手ではどうじゃ」
「それがしだけではござらぬので」
見れば柴田の後ろに前田や佐々、川尻といった織田家の武名を誇る者達がいる。その彼等を率いているからこそだ。
柴田は確かな声でだ、こう政宗に返したのだ。
「充分に」
「そう言うか」
「ではお相手致します」
柴田は刀を抜いた、そして。
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