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第一章
軍服の裏
一国の君主であられた。しかも所謂王侯よりも上位とされているだ。
皇帝、我が国の言葉では天皇と呼ばれる。明治という我が国の歴史においてとりわけ重要な時代の象徴であられその発展と興隆の軸であられた。
明治帝とはそういう方であられた。その明治帝はだ。
ある日のことだ。帝は日々会議にや御政務に勤しんでおられた。その際常に軍服を着ておられた。
白馬に跨る大元帥陛下、明治帝はそのイメージで語られることが多かった。それは今現在でもそうである。だからこそ常に軍服を着ておられた。これはこの時代の君主ならば誰でもそうだ。軍服は二十世紀、二十一世紀よりもだ。公の場ではより一般的であり普遍的なものであったのだ。
だからこそ帝は軍服を着ておられた。しかしその軍服がだ。
裏である。軍服の裏が破れていた。それを見た侍従か武官、とにかく帝の御傍にいる者がだ。こう言ったのである。
「すぐに軍服を取り替えましょう」
裏が破れている軍服なぞ君主が着るものではない、だからだというのだ。これはどの国においてもだ。普通に言われ考えられていることである。
それで帝の軍服を取り替えようとした。しかしだ。
帝はだ。こうその者に言われたのだ。
「よいのだ」
「よいとは?」
「裏が破れているのならなおせばよい」
これが帝の御言葉である。
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