ep-1─それは突然に舞い降りて
#02
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のだ。あの日の悲劇を。あの日の罪を。あの日の涙を。
この手で仲間を殺した、あの血の夜の事を、レンは永遠に覚え続けている義務がある。贖罪し続ける定めがある。
これは呪いだ。聖女の祝福を妨げる呪い。
だがしかし、それがレンの存在証明で在る事もまた、確かなのだ。
「……もう一度聞く。お前は誰だ。どうしてここにいる? どうしてここに入ってこれた? 鍵は俺しか持っていないはずだ」
「あら、簡単だわ。私は《円卓のマリア》。貴方に逢う為に此処に来た。入り方は至って単純、入口の鍵を、私の力で『開けた』だけ。それなら鍵もいらないわ」
「……馬鹿らしい」
さも当然の様に、とんでもないことを口にしたマリアに対し、思わず悪態が付いて出る。
魔法科学文明崩壊後、この世界に、魔法や魔術と言ったシロモノは、基本的には存在し無い。唯一の例外が《担い手》達の操る《超越回帰》であり、それらを介するならば、どんな大魔術でも一人で行使できてしまう。
そんなパワーバランスが可笑しい世界が、今のこの世界。
1000年以上前に一度崩壊し、そして五十年前に再び崩壊しかけた、この世界の常識だ。
その常識に照らすならば、マリアと名乗ったこの少女が、《担い手》であると仮定すれば何の問題もあるまい。
ただし……そう決定付けるには、多少の違和感があるのだが。
見えないのだ。
レンは己の持つ《超越回帰》の一端として、目で見た相手が《担い手》なのか否かを判別する力を持っている。もし対象が《担い手》だったのであれば、なんとなくではあるが、彼らの頭上に緑色かオレンジ色のひし形の様なもの…レンは《カラーカーソル》と呼んでいる…が見えるのだ。
この力は『切る』ことができるが、今のレンはそれを『付けて』いた。それ故に、マリアの頭上にカラーカーソルが浮かんでいないこの事態が受入れがたい。
しかし、少女はくすり、と笑って言うのだ。
「判別できない子だってたくさんいるのよ。貴方の知っている人に、貴方が判別できていない子は……そうね、五人くらいいるかしら。『未覚醒』を含めたらもっとたくさんいるわ」
「何……?」
つまりこの女は。
レンの力で、見ることの敵わない《担い手》が存在することを示唆しているのだ。何故能力の事を知っているのか。その驚愕がレンの身体を駆け巡る。
マリアは微笑を浮かべながら続ける。
「その多くが、貴方とは違う《運命》の核を持っている子たち。貴方が夢に見る『剣の世界』とは別の場所で暮らしていた子たちよ」
「……!? 《運命の記憶》の内容まで知っているのか……!」
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