第四話 屋敷しもべ妖精
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はたった1人でこの広大な家を隅々まで綺麗にしている。誰に言われるでもなくお前自身で考えて掃除を行っているのだ。
この城とも呼ぶべき家をたった1人で切り盛りするなど私にも出来ん。アーロン家の人間が暮らしやすくする為に臨機応変に動き回って働くなど、お前以外の誰に出来ようか?
誇るが良い、お前はアーロン家の誰しもが優秀であると認める存在であるということを……これからもよろしく頼むぞロタロタ」
「はい、はい!!必ずや期待を裏切らぬ働きをして見せます」
「クックック……面白い奴だ。しかしその格好はいただけんな」
「えっ!?」
「アーロン家に仕える者が貧相な暮らしをしていれば、アーロン家の格を疑われるぞ?金が無いなら用意してやる。自由に休暇をとって最高級の素材で最高級の服を揃えてこい」
「めっ滅相も無い!お金なら今までアーロン家の方々が下さったお金が御座います。急いで服を揃えて参ります!」
「足りなければいくらでも出してやるから、一番良いものを揃えてこいよ?」
当主は蒼い瞳でロタロタの目を覗き込み、嘘偽りは赦さぬぞと言外に告げる。
ロタロタの顎を軽く持ち上げ、当主は妖しく笑みを浮かべる。
ここでロタロタはふと我に返る。“主人から衣服をもらった”もしかしてこれは解雇通知ではないのだろうか?……ロタロタは困惑した。誉め言葉でごまかしながら、本当はロタロタをこの家から追い払おうとしているのではないか?
「あの……御当主様。服をくださるということは……」
おずおずと真意を尋ねようとするロタロタに不思議そうに当主は尋ねる。
「何だ、ロタロタは出て行きたいのか?」
「いえいえいえいえ、どうかロタロタをこの家に居させ続けてください!」
慌ててひれ伏して懇願するロタロタに当主は言う。
「服を与えて契約が切れるなら、再び契約すればいい。メモ帳やペンなど好きなものを買ってやるぞ。契約が切れて去っていくならば、それは私に再び仕えるだけの価値がなかったということだ。無理に仕えさせる必要もあるまい」
ついでにもう一言加える。
「家事の褒美として衣類を与えられると、満足して家から離れてしまうと言われるが、服の価値など時代によって変わるし、すぐにより良い服が出る。新しい褒美などすぐに出来るのだから、解雇されるかもなどと気にするな」
少しずれた答えではあったが、ロタロタにとっては満足な答えであった。
当時を思い返し微笑みを浮かべていたロタロタであったが、来客の知らせが入りやがて扉が開かれる。
「いらっしゃいませ。アーロン家へようこそ」
ロタロタと新たな主人との対面の時が来た。
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