第四話 屋敷しもべ妖精
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アーロン家に仕える屋敷しもべ妖精ロタロタは、この日、新たな主人との10年ぶりの再会を期待して、朝からずっとソワソワしていた。
屋敷しもべ妖精とは、独自の魔法を操り、魔法使いより強力な魔力を持つ小さく醜い人型の魔法生物。その見た目は茶色い顔、テニスボールくらいの大きな目、顔が割れて見えるほどに大きな口、コウモリのような長い耳、細く短い手足に長い指をしていて、今も甲高いキーキー声で独り言を呟きながら確認作業をしている。
「3回通り掃除した。隅々までピカピカにした。各所に油もしっかり差した。外も草をむしって花を植えた。部屋の飾りも見栄え良く直した。故障している施設は無い。時計の時間もピッタシ。……まだ何かあるか?あぁぁぁあ〜もう一回通り掃除をしておこうかな?いや、もう直ぐいらっしゃる筈だ。そんな時に掃除の途中なんて失礼な真似は出来ない。ちゃんと出迎えないと……」
玄関前のホールでウロウロウロウロウロウロウロウロ───
落ち着き無くブツブツと呟きながら、行ったり来たりとうろついている。
通常屋敷しもべ妖精というのは奴隷同然に扱われるのが普通であり、虐げられる事はあっても優しく扱われる事など滅多にないのだが、アーロン家の人間は普通とは少し違う特殊な考えを持っていた。
《自身の役に立ったなら、例えゴミにでも敬意を払え。》《何かに頼りきる事は腐敗と退化の始まりである。利益に対しては必ず対価を払え。》《アーロンの名に恥じぬ生き方をしろ》
アーロン家の人間にとって、屋敷しもべ妖精に『敬意』を払って接する事は自身の品格を貶めぬ為に必要な事であり、屋敷しもべ妖精とは自身の風格や生き様を見せつけ、本心より従わせる者であった。
故に、今までアーロン家の人間がロタロタに命令をしたことは一度も無く、ロタロタは自分で何をすると主の役に立てるかを考え、自分の意思で働いていた。
昔、ロタロタは何故自分がこんなにも優遇されているかを当時の当主に聞いてみたことがあった。すると何を言われたのか分からなかった当主は疑問顔で考えこんでいたが、しばらくすると口の端を吊り上げ、ロタロタの疑問に答えた。
「それはロタロタ、お前が優れているからだ」
「ロ、ロタロタが優れているですって!? いけませんいけません御当主様!ロタロタはごくごく普通のことしか出来ておりません!」
思いもしなかった賛辞にロタロタは驚き舞い上がり、キーキー声で頭を振り乱した。
しかしそんな彼の様子を見て当主は笑い声を上げる。そして彼の頭を撫でながら賛辞を続ける。
「普通なものか。事実お前たち屋敷しもべ妖精は杖を使わずに強大な魔法を用いる事が出来る。 勘違いするなよ?我々アーロン家が敬意を払うのは屋敷しもべ妖精という種族ではなくお前個人に対してだ。
お前
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