第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十三話 緋色の宵 後編
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無いのだ、そんな現状に虚空の心には『この少女を助けるより無理をしてでも百鬼丸に追いすがった方が良かったのでは?』という言葉が浮かんだが、
「……おやおや、いい歳して情けないな僕は」
燃え盛る炎に照らし出される廃墟と化した街並みを、茫然と見つめる妹紅に視線を向けながら自嘲するようにそんな事を呟いていた。
結果がどうあれ選んだのは自分自身だ。気に入らない、納得できない答えを突き付けられたとしてもそれを享受しなければならない。それが“選択する責任”というものだろう。
虚空は気持ちを切り替えこの後の行動を思案する。終わった事に愚痴を言っていても事態は好転などしない、それは経験上よく知っているのだから。
周囲に視線を向けていた虚空は突然何者かに後頭部を殴打される。幸運な事に普通の人よりは頑丈な上に襲撃者が非力なだった事が幸いし深刻な傷にはならなかった。
「……痛いんだけど……僕が何かしたかい?」
殴打された場所を手で抑え振り返りながら、虚空は襲撃者である妹紅にそう問いかける。
彼女は虚空を殴りつけた瓦礫を握りしめ憎悪に近い感情を瞳に宿しながら息を荒げ、
「あなたのせいよッ!全部ッ!全部ッ!全部ッ!返してッ!返しなさいよッ!!!」
そう叫ぶと瓦礫を持った手を振り上げ虚空に向け飛び掛かってきた。余程強く握りこんでいるのか妹紅の手からは血が流れ空中に炎とは違う赤色を振りまいた。
一方の襲われる側の虚空は対処に困っていた、恐らくは錯乱しているのだろうと思ってはいるが――――正直に言えば妹紅を気遣えるほど彼に余裕が無いのだ。
説得するにしても聞く耳を持ってくれるかも怪しい為、どうあしらうか決めかねていた虚空の目の前の空間が縦に裂ける。
するとまるで星空の様な光景が広がり妹紅が驚愕の表情を浮かべながらその空間へと消えていき、何事も無かったかのように空間の裂け目は閉じる。
「……漸く見つけたかと思えば、どういう状況なのか教えてくれる?お父様?」
何時の間にか虚空の傍らに現れていた紫が小首を傾げながら虚空へと質問を投げかけてた。
「あ〜〜色々としか言えないって言うか……紫の方こそどうしたんだい?……それにその怪我どうしたの?」
虚空は紫の巻軸帯に吊るされた右腕を指しながらそう聞くと、紫は少し困ったような表情を浮かべ、
「言うなれば“名誉の負傷”かしら?こっちも色々あってお父様を探していたのよ。百鬼丸の居所が分かりそうなんだけど――――ちょっと問題があるの、だからすぐに郷に戻ってもらいたいのよ」
紫の言葉は現状に行き詰っていた虚空には最高の朗報だった。本当に世界の幸・不幸の天秤は平行なのだと心の中で思いながら。
「戻るのは構わないんだけど、その前に永琳と
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