第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十三話 緋色の宵 後編
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ら、
「早く立ちなさい、家族の手を引いて走る――――それが今あなたがするべき事でしょう?」
その言葉に男性は一言礼を言うと家族の手を引き再び走り出した。父親に手を引かれながら少女は遠のく女性に視線を向ける。
「ありがとう女神様」――――そんな少女の感謝の言葉は焼け落ちる家屋の騒音に掻き消されていった。
逃走を再開した三人の脅威は未だ去っておらず、上空から一匹の妖怪が新たな追撃者となって迫ろうとしていた。
人に近い姿をしその背には四翼の翼を持つその妖怪は、先ほどの巨狼と違いすぐにでも獲物を仕留める気でいるのか両手の爪をギラつかせ疾風の如く三人に迫る――――が突如その妖怪の進路上に透明な硝子の小瓶が飛び込んでくる。
妖怪はその小瓶を払う事もせず体当たりで破壊し、小瓶は硝子特有の高い音を立てながら砕け散ると中に入っていた粉末を撒き散らす。
それはほんの一瞬の出来事であり次の瞬間――――途轍もない閃光と空気を震わせるほどの轟音が空間を支配する。例えるならその現象はまるで落雷。
数秒も経たない内に空から黒い物体が地面へと落ちてくる。原型を留めておらず炭の塊の様なそれは先ほどの翼を持った妖怪の成れの果てであり、女性――――永琳はその塊に足を乗せると卵を潰すかのように踏み砕く。
「爆雷紛とでも名付けようかしら?ふふっ我ながら安直だわ♪」
踏み砕いた物体が塵になっていくのを眺めながら彼女はそんな風に独り言つ。
そんな彼女に向かって突如八つの影が襲い掛かった。
人型や虎、鰐のような者から不定形まで多種多様な妖怪が現れ明確な敵意と殺意を持って永琳に牙を向けてくる。
恐らく先ほどの巨狼の狩りを外野から面白半分に眺めていた者達なのであろう。その巨狼ともう一匹を呆気なく殺した永琳を脅威と感じ一斉攻撃に移るのは妥当な判断と言える。
しかし判断が妥当だとしても、それが正しいとは限らないのが世の常――――この場合彼等はこの場からすぐに逃げるべきだった。
八匹の内、四匹が爪や牙で襲い掛かるが永琳は即座に上空へと飛び上がり彼等の攻撃は空を切る。
だが空中に上がった永琳に向け虎型の妖怪がその巨躯を生かし覆い被さるように飛び掛かっていた。回避行動を取る永琳だが虎型の爪が白衣の裾を切り裂き少し体勢を崩す。
虎型の攻撃が掠めたせいで一瞬出来た永琳の隙を突き、地上に居た蛇型の妖怪が口から三発の光弾を打ち出した。
迫る光弾に永琳は慌てる事も無く、まるで弓矢を引く様な動きを取ると彼女の手元には黄金に輝く矢が一本生まれる。
その矢は即座に放たれ金色の軌跡を描きながら三発の光弾を打ち砕き、光弾を吐いた蛇型を射抜くと同時に黄金の輝きを爆発させた。光が治まった後に残っていたのは十m程の
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