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ルターの結婚
3部分:第三章

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第三章

「そういうものだよ」
「けれどあの娘は」
「うん、誰もいいとは言ってくれないね」
「どうしましょうか」
「まだ探そう」
 ルターはこう言ったのだった。
「誰かいないかね」
「そうですね。それじゃあ」
「誰かいる筈なんだ」98
 ルターは何としてもという口調であり意地になってさえいた。
「神は生涯の伴侶を決められているから」
「そうですね。ですから」
「絶対にいるんだ」
 また言うルターだった。
「だから」
「はい。見つけましょう」
 こうしてだった。まだだった。
 彼等は彼女の相手を探した。そうし続けた。だが。
 結局だ。相手はだった。
「見つかりませんね」
「そうだな」
 ルターもだ。流石にだ。
 困った顔でいてだ。そうして言うのだった。
「一人もな」
「お見合いをしてもですからね」
「誰もよしと言ってくれない」
「性格は凄くいい娘なのに」
「世の中人を見る目のない男が多い」 
 よく言われることをだ。ルターも言った。
「実にな」
「そうですね。本当に」
「しかしだ」
 それでもだとだ。ルターは言いだ。
 そうしてだ。遂にだった。
 彼は決断した。そうして言うことは。
「まだ手はある」
「ありますか?」
「結婚しよう」
 腕を組み意を決した顔での言葉だった。
「こうなれば」
「結婚しようとは?」
「だからだ。私がだ」
「?」
 その言葉の意味がわからずだ。若い僧侶は。
 怪訝な顔になり首を捻りだ。そのうえでだ。
 ルターに対してだ。こうも言ったのだった。
「誰がですか?」
「誰がか」
「はい、結婚しようとは」
「決まっている。それはだ」
「まさかと思いますが」
 その怪訝な顔でだ。若い僧侶はまたルターに尋ねた。
「その結婚する人って」
「結婚は男女それぞれ一人でするものだぞ」
「それは常識ですよね。つまりは」
 あえてだ。若い僧侶は答えを延ばしてだ。こう言ったのだった。
「あの娘ですよね」
「それだと正解は半分だな」
「後の半分は」
 そのどうしても言えない答えをだ。若い僧侶は遂に言った。
 恐る恐るだ。言う答えは。
「今私の目の前にいる」
「そう、そしてそれは」
「嘘ですよね」
「私は嘘は言わない」
 頑固で厳格なルターは己にも厳しい。その言葉に二言はない。ただしトマス=ミュンツァーの起こした戦争は最初は支持していたが過激になり過ぎたので後には反対に回った。このことでは嘘吐きと呼ばれ批判されている。
 しかしだ。とにかく嘘を言うつもりはない彼だった。それでだ。
 今もだ。強い声で言うのだった。

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