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友の救い方
第一章
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                    友の救い方
 オットー=フォン=ビスマルクは色々言われている、それは後世になっても同じだ。それは生前からである。
 生前の彼は学生時代何と一年で二十数回の決闘を行い勝って来た。それでついた渾名が乱暴者ビスマルクだった。
 とにかく彼は強かった、そしてそのイメージがそのまま評判になってだった。その主張と共に警戒する者が多かった。
 だがその彼もだ、友人達が言うには。
「あれで結構な」
「いい奴だよ」
「そうそう、友人思いで」
「親切なところもあって」
「冗談も言ったりして」
「悪い奴じゃないんだよ」
「困った時には助けてくれる」
 意外とだ、その評判はよかった。友人のそれは。
「頼りになる奴だよ」
「確かに頑固で大食で酒もかなり飲むが」
「人間的な部分も多い」
「悪魔でも冷血人間でもない」
「タレーランやフーシェとは違う」
「弁えていることは弁えている」
「そうした人間だよ、彼は」
 それがビスマルクだというのだ。
「一緒に狩りをしたりもする」
「そうそう、今度私が狩りを一緒に行くんだ」
 友人の一人がここでこう言った。
「彼と一緒にね」
「そうか、それならその狩りを楽しんでくるといい」
「彼と共に狩りを」
「そのつもりだよ」
 その友人は周りに笑顔で応えた、そして。
 実際に彼はビスマルクと狩りに出た、二人共狩りの服と帽子で手には猟銃がある。腰にはピストルもあり猟犬達も連れている。従者達もいる。
 用意が出来たところでだ、友人はビスマルクに笑顔で言った。
「それじゃあ今から」
「うむ、狩りに行くとしよう」
 ビスマルクも普段の厳しい顔を綻ばさせて友人に応えた。
「今日は楽しもう」
「昨日は眠られたか」
「いや、相変わらずだ」
 寝ることについてはとだ、ビスマルクは彼に苦笑いで応えた。
「不眠症だ」
「そうか、そのことはか」
「どうしてもベッドに入るとだ」
 これはビスマルクの特色だった。
「あれこれ思い出して不機嫌になりだ」
「眠れないか」
「難儀な気質だ、いざ寝ようとするとだ」
「嫌なことを思い出してか」
「眠れない、そのことは相変わらずだ」
「虫歯のせいじゃないのかい?」
 友人はビスマルクの持病のことに原因を求めた。
「君の」
「虫歯が寝る時に不機嫌になる原因となるのか」
「何でも歯が悪いことは万病の元という」
「そうなのか」
「そうらしい、この前医師に言われた」
「そうなのか」
「だから君もだ」
 友人としてビスマルクに言うのだった。
「歯をだ」
「治療しろというんだな」
「そうだ、そうしてはどうか」
「私は歯医者が嫌いだ」
 ビスマルクは歯の治療を勧める友人に不機嫌そのものの顔で返した。

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