第八章
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美咲の言葉に従って寝室まで彼女を連れて行った、そしてベッドのところまで来たがそこでだった。不意に。
美咲は岳に抱きついて彼をベッドの上に押し倒した、それからだった。
一年後美咲は会社の今度はドリンクコーナーの中で微笑んでだ、雄太郎に紙コップのコーヒーを飲みつつ話した。
「無事にね」
「エースをか」
「ええ、つなぎ止めたわ」
「まさかそうするなんてな」
「私が独身だったのはね」
「ああ、何時相手が出来るかってな」
雄太郎は笑って美咲に返した、
「思ってたさ」
「気にかけてくれてたのね」
「俺は二人目が出来たさ」
自分の子供の話もするのだった。
「けれど御前はな」
「それでもだったのね」
「どうなるかって思ってたけれどな」
「もう籍は入れたわ」
「早いな」
「私だってね」
美咲はここでこんなことを言った。
「もう二十九だから」
「ああ、もうだな」
「焦ってたし」
「御前さん自身の為にもよかったんだな」
「そうなの」
そうだったというのだ。
「だからそのこともあって」
「籍を入れたんだな」
「そうだったの」
こう雄太郎に話した。
「それで彼はね」
「御前さんの旦那さんになってか」
「それで私もこの会社にいるから」
「引き抜きも出来ないな」
「政略結婚になるかしら」
くすりとしてだ、美咲は雄太郎に言った。
「これも」
「どうだろうな、けれどな」
「けれどなのね」
「よかったじゃないか、会社にとっても御前さんにとってもな」
「優れた人材を引き抜かれなくて私もね」
「結婚出来たからな」
そうした要素が重なって、というのだ。
「本当にいいこと尽くめだよ」
「そうね、彼を見事篭絡したというか」
自分の夫にしてだ。
「毒殺したかしら」
「御前さんの魅力にな」
「これでも色々と自信があるのよ」
美咲はくすりと蠱惑的な笑みを浮かべた、それは妻子持ちの雄太郎も一瞬だが心を動かされるものだった。
その笑みでだ、美咲は言った。
「仕事のこと以外にも」
「御前さん自身のことをか」
「そうよ、それを使ったのよ」
「そういうことか」
「もっともずっと使ってこなかったけれどね」
「けれど使う機会が出来たか」
「これからもね」
「相手は一人だけだな」
雄太郎は美咲のその普段とは違う、妖艶な笑みを見つつ問うた。
「旦那さんだけだな」
「勿論よ。これでも尽くす妻だから」
「一生御前さんに篭絡されていくんだな」
「そうなったわ、彼は」
同期の雄太郎にこう話してだ、美咲はあらためてだった。飲み終えてから仕事に戻った。そして夜は岳に全てを尽くしてその心を自分のものにしていった。
変わった毒殺 完
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