第四章
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「髪の毛洗うのもさらに大変になってるし。それに」
「それになのね」
「踏んだりするし。誰かが悪戯で触ったりとか」
「そうしてくるから」
「あまりよくないわ」
これが母の意見だった。
「上にお団子にしてまとめるにしても」
「長過ぎて」
「もうまとめきれないから」
「じゃあもう」
「少し切った方がいいと思うわ」
このこともだ、母は娘に正直に答えた。
「そうしたらどうかしら」
「そうね」
「珠緒ちゃん古典の授業でよね」
「うん、平安美人のお話聞いてね」
「髪の毛を伸ばし続けているけれど」
この辺りは母も七海と同じことを言った。
「それでもね」
「今は二十一世紀で」
「平安時代じゃないし」
それに、というのだ。
「十二単も着ないでしょ」
「あれを着るのはね」
平安美人の髪に憧れている珠緒えもだった、このことについては。
「ちょっと以上にね」
「抵抗あるわね」
「流石に無理よ」
そうだというのだ。
「あれ凄く大変そうだから」
「そうでしょ、それじゃあね」
「切った方がいいのね」
「ロングヘアが好きにしても」
「普通の長さね」
「そうした方がいいわ」
これが母の言葉だった、そして。
母の言葉も受けてさらに考えてからだ、そしてだった。
珠緒は美容店に言った、その翌日だ。
七海はその彼女を見てだ、目を丸くさせてこう言った。
「あれまあ」
「あれまあなのね」
「ええ、やったのね」
「ええ、やったわ」
まさにという調子でだ、珠緒は七海に答えた。
「この通りね」
「そうなのね」
「いや、私もね」
まさにというのだ。
「決断したから」
「肩が隠れる位ね」
七海は珠緒の今の髪の毛を見つつ言った、その長さは丁渡脇の辺りまでになっている。やはり長いがこれまでと比べると相当に短い。
「したのね」
「そうなの」
「そんなに気になった?私の言葉」
「いや、お母さんにも言われて」
このことをだ、珠緒は七海に話した。
「私から聞いたけれど」
「それでなのね」
「決めたのよ」
「髪の毛切ろうって」
「そうなの、やっぱり自分の髪の毛踏んでこけたりしたら」
「洒落にならないしね」
「掴まれたりもするし」
母に言われたことを自分でも言った。
「だからね。思い切って」
「そこまでしたのね」
「いや、切ってみてわかったことは」
「何なの?」
「頭随分と楽になったわ」
髪の毛をこれまでの三分の一位の長さにしてというのだ。
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