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第一章
夜会
今夜は。宴だった。
宴であるから様々な人間が集っていた。このウィーンは元々そうした街であるが今はとりわけだ。様々な国から様々な人間が集っていた。
ナポレオンが倒れ列国の者達が着飾りそのうえで集っている。そうして宴を楽しんでいた。
その中でだ。宴の御馳走を食べてだ。ロシアの者達が言う。
「これはいいな」
「そうだな」
こう話していくのだった。
「これがウィーンの料理か」
「本当の宮廷料理なのか」
「いやいや、違いますぞ」
ここでだ。フランスから来た男がロシアの者達に話す。
「これは真の宮廷料理ではありませんぞ」
「違うのですか」
「はい、やはり我が国です」
フランスだとだ。自分の国がだというのだ。
「我が国のものがです」
「真の宮廷料理だと」
「そう仰いますか」
「我が国の宮廷料理はそれこそです」
自慢からだった。まさにそうした話だった。
「あのカトリーヌ=ド=メディチにはじまりです」
「ああ、あの王妃ですか」
「イタリアから来たという」
あのサン=バルテルミーの虐殺を引き起こした王妃だ。お世辞にも評判のいい人物ではないがロシアの面々はそのことは隠して応える。
「あの王妃からですか」
「はじまったのですか」
「そう、そしてルイ十四世の頃に完成され」
フランスの男は胸を張って誇らしげに話していく。
「今に至るのです」
「ではその宮廷料理と比べればですか」
「このウィーンの宮廷料理は落ちる」
「そう仰るのですね」
「料理だけではありませんぞ」
言いながらテリーヌを食べる。子鴨のテリーヌをだ。
そのうえで次はワインを飲む。その話すことは。
「ワインにしろです」
「ワインですか」
「このワインも」
「我が国はワインの宝庫です」
実際にフランス各地でワインを生産している。名産となっているワインが実に多い。
「我が国にワインで勝る国はありません」
「ではそのワインをです」
ロシアの者のうちの一人がこうフランスの男に言った。
「一度飲んでみたいですが」
「はい、それではです」
その言葉を待っていたかの様にだ。フランスの男は応えた。
「今宵私の部屋に来て頂ければです」
「そのフランスのワインを御馳走して頂けるのですね」
「そうすればおわかりになられます」
「フランスワインの素晴しさを」
「そうです。ですから」
それでだとだ。彼はロシアの面々を誘っていく。
「いらして下さい」
「わかりました。それでは」
「宜しく御願いします」
ロシアの面々はフランスの男の言葉に頷いた。そうしてだ。
自慢話ができたフランスの男は意気揚々と美人達の中に向かう。その後姿を見送っ
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