第二章
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「じゃあ少し歩いて」
「行こうか」
「そうね、それでだけれど」
「それでって?」
「私そうした場所に入るのはじめてだから」
心臓の鼓動が高くなっているのを感じながら言った。
「だからね」
「それ僕もだから」
「お互いなのね」
「緊張してるよ」
強張った笑顔でだ、私に言うのだった。
「どうしようかなってね」
「行くのよね」
「だからここまで来たしね」
「私もよ。ここなら皆いないし」
舞鶴と京都は離れている、同じ京都府でも。だから電車を使って山を幾つも越えてわざわざここにまで来たけれど。
それでもだ、ここに来てだった。
「そう思ったけれどね」
「いざってなると」
「怖いわね」
「どうする?本当に」
彼は私に顔を向けて尋ねてきた。
「行く?どうする?」
「行く為に来たのでしょ」
これが私の返事だった。
「だったらね」
「答えは一つだね」
「ええ、行くのよ」
絶対にとだ、私は彼に言った。
「これからね」
「そうだね、それじゃあ」
「行きましょう」
私からだった、彼のその手を両手で掴んで引いてだ。
そうしてだ、こう言ったのだ。
「今からね」
「そうだね、じゃあ」
「ホテルにね」
二人でこう言ってだ、そしてだった。
私達はその角を左に曲がってだった、観光客は普通は来ないそこに入った。そこは話に聞いた通りのホテル街だった。
如何にもというホテルが並んでいてカップルが見える、中には男の人が一人だけ出たり入ったりしている。
その人達を見てだ、私は少し苦笑いになって彼に言った。
「あの人達ってね」
「うん、ホテルの中にまずはね」
「自分だけ入ってよね」
「そうしてね」
「後で女の人が来るのよね」
「そうしたお店もあるからね」
デリバリーヘルスらしい、そうしたお店もあることは知っている。
「だからね」
「あの人達はそういうお店を利用してるのね」
「そうだろうね、やっぱり」
「そうね、けれど」
「僕達はね」
「これから二人でね」
「入ろう」
喉で唾をごくりと鳴らしてからだ、今度は彼から言って来た。
「これから」
「そうね、じゃあ」
私も意を決した顔で答えた、そして。
いざ行こうとしたところでだ、急にだった。
私の頭に何かが落ちた、それから。
一つ落ちてきてまた一つだった、それから二つ三つとどんどん増えてきて。
すぐに数えきれない位になった、大雨だった。
その急の大雨を受けてだ、私達は慌てて傍に見付けた喫茶店に二人で飛び込んでそこで雨宿りをした。その中で。
彼はアイスコーヒーを飲みながらだ、私に苦笑いで言って来た。
「びっくりしたね」
「ええ、急にだからね」
「さっきまで晴れてたのにね」
「そうそう、本当に
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