最終話:帰るべき場所
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い。それに……またフェイト達に会えるかどうか分からないからな」
――自分以上に大切な者の為に願いを叶える……か。ふふふ、やっぱり人間は面白いね。生き返らせてみて正解だよ――
声の主は愉快そうに笑い男の頭に響き渡る。ここで、この声の主の正体を男は理解した。しかし、声の主が分かっても不思議と男の心は穏やかだった。実際に会えば怒りか憎しみのどちらかの感情が湧き上がるだろうと思っていたので意外だった。
――いいよ。君の願い、聞き届けよう。僕に人間の可能性を示してくれたお礼だよ――
「いいのか…?」
――二度は無いよ。それじゃあ、君の願いを叶えよう――
その言葉にこれで、フェイトは幸せになれるだろうと確信するヴィクトル。そして、何故か急に重くなってきた瞼をゆっくりと閉じ、意識を手放す。
男は幸せな夢を見た。愛する妻が出てくる夢だった。もう一度、抱きしめたくて男は妻に近寄った。しかし、妻は自分から離れ、少し遠くに行くと振り返り悪戯っぽく笑ってみせた。使えまえてごらんと言われているように感じて男は微笑みながら妻を追っていく。男が近づけば妻は離れ、男が止まれば妻も止まる。そんな追いかけっこをしていき、随分と経った後についに妻は完全に立ち止まり男に追いつかれた。
「追いかけっこは終わりかい―――ラル」
「ふふ、だってルドガーが私の事を抱きしめたくて仕方がないって顔してるんだもん」
「まったく……その通りだよ」
男は妻を抱き寄せ、強く抱きしめた。それに対して妻はクスクスと笑いながら体を男に預ける。しばらく、抱きしめて満足したのか男は妻を開放する。そして、今度は優しく口づけをする。妻もそれに応え口づけを返す。慈しみに満ちた行為を終えた後、男は口を開く。
「ずっと会いたかった。これからはずっと一緒だ」
「私もよ、ルドガー。でも……あなたはまだ来たらダメ」
「ラル?」
不思議がる男をよそに妻は楽しそうに笑い男から離れた。すると、男の意識はどんどんと薄れていく。何がどうなっているか分からない男の頬を優しく撫でながら妻は微笑みかける。
「あなたがいないとあの子は幸せになれないの。ちょっと妬いちゃうけど我慢ね」
「ラル……俺は……」
「ルドガー……幸せになってね」
その声を最後に幸せな夢は終わりを告げた。
次に男が目を覚まして見ると、目の前には見慣れた扉があった。男がフェイトとアルフと一緒に住んでいた家だ。それと不思議な事に体には傷が一つもない。全てが元通りになっている。恐らくはこれも彼女の願いなのだろう。プレシアも病魔に侵される前に戻っているだろうと男は考えながら玄関のチャイムを鳴らす。
すると、すぐに聞きなれた声が聞こえてくる。慌ただしい音も聞こえて
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