暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは〜過ちを犯した男の物語〜
最終話:帰るべき場所
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彼は手を伸ばそうとするが途中で止めて骸殻を解き満足げな笑みを浮かべて彼等に笑いかける。その笑みを見たルドガーは彼が二人の事は任せたと言っているのだと理解して無表情のまま頷く。そして、彼は最後に少女に向けて声を投げかける。

「ありがとう……これで“俺”は、やっと―――約束を守り通せた」

「ヴィクトルさぁぁぁんっ!」

 まるで、心残りなど欠片もないと言うような穏やかな声に絶叫しながらフェイトは思い出す。

『本当に本当の約束だ。私、ヴィクトルとフェイト・テスタロッサは必ずその願いを叶えることを約束します』

 自分の願いは全部終わったら―――母さんに抱きしめて貰う事。フェイトは今まさに母親に抱きしめられている状況を思い出してハッとする。自分の願いが叶ったからこそ彼は命を捨てたのではないかと思い立ち、もう米粒ほどにしか見えないヴィクトルを追おうとして虚数空間の中に飛び込もうとするがプレシアに抱き留められて動くことが出来ない。

「離して! ヴィクトルさんが…っ!」
「フェイト……もう、彼は助からないわ」
「うそ! まだ……まに…あう……っ」
「分かってやれ。あいつにとって……お前は何に代えても守りたい者だったんだ」

 しばらく暴れていたフェイトだが、ルドガーの言葉を聞くと動かなくなり声を上げて泣きだし始める。そんな姿にルドガーと共に来ていたなのはも涙を流す。アルフは茫然とした様子で、ヴィクトルの消えていった空間を見つめている。クロノも思うところがないわけではないがこれ以上ここにいては時の庭園の崩壊に巻き込まれるので脱出するように告げる。そんな時だった。―――一人の少女の声が聞こえて来たのは。

「マ……マ……」

「うそ……アリ……シア?」

 プレシアが振り返ってみるとそこには自身のもう一人の娘でフェイトの姉であるアリシア・テスタロッサが立っていた。





 男はどこまでも続く闇の中を落ちていきながら笑っていた。かつて犯した罪が消えるわけではないが約束を守り通したという事実は彼を満足させるには十分だった。だが……ひとつだけ心残りが存在する。自分に手を伸ばしてくれた少女が幸せになれるかどうか。

 それだけが気がかりだった。彼女には信頼できる者達がいるのでそこまで心配いらないと思うが……やはり少女の泣き顔というものは辛いものがあった。そんなことを考えていると頭の中に不思議な声が響いてきた。

――もし、何か一つだけ願いが叶うなら君は何を願う?――

 死ぬ前の幻聴か何かと思い、男はその声に違和感など抱かなかった。男は問いにしばらく考えた後に優しい声で答えた。

「彼女の……フェイトの幸せだな」

――自分の願いはいいのかい?――

「生まれ変わっても、ラルとエルには会えな
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