最終話:帰るべき場所
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フェイトの腕の先には自分でも信じられないような顔をしたプレシアがしっかりと娘の手を握って彼女を引き戻そうとしていた。
「ダメね……もう、我慢できないわ。フェイト、やっぱり私はあなたを―――愛してるみたい」
「母さん……ホント?」
「ええ……あなたもアリシアも私の大切な娘…! だから、こんな所で死なせたりなんかしないわ!」
ようやく、口に出せた本音。プレシアは涙を流しながら手を握る力を強める。フェイトの方もずっと欲しかった、愛しているという言葉に嬉しさが止まらずに危機的な状況にも関わらず涙を流す。そんな二人の様子にやっと歯車がかみ合ったと思いながらヴィクトルとアルフ、クロノが二人を引き上げるために近づいていこうとしたが―――現実は非情だった。
プレシアが支えにしていた足場とその一帯が突如として崩れた。非情な現実に絶望の表情を浮かべながらフェイトと共に落下していく中、プレシアはせめて最後まで寂しい思いはさせまいとフェイトの体を強く抱きしめる。フェイトは自分の願いが最後の最後に予期せずに叶った事に皮肉を感じながらもその暖かさに包まれてゆっくりと目を瞑った……。
「させるかぁぁあああっ!」
だが、その現実に抗う物がいた。ヴィクトルだ。雄叫びを上げながら骸殻へと姿を変え、崩れ落ちていく瓦礫を足場にして飛び移りながら二人の元に辿り着こうとする。そして、落下していきながらも二人を抱き留めることに成功する。驚く二人をよそにヴィクトルは二人を抱きかかえ、近くに落ちて来ていた瓦礫を蹴り上げ、地上へと飛び上がった。だが、無情にも後少しという距離で重力に負け、再び落下を始める。
「くそっ! また、“俺”は守れないのか…!」
己の無力さへの呪いの言葉がヴィクトルの口から零れる。そんな時、彼の目にある者が入って来た。闇に溶ける様な黒を基調とした鎧を思わせる装甲が全身を覆い、希望のように光輝くラインが身体中に流れ、背中からは光のひだのようなものが二本生えた自身とは違い綺麗な骸殻―――ルドガーの姿だった。彼は無事に駆動路を止めた後、骸殻を用いて庭園の壁を破壊してこの場まで来たのだった。
「ヴィクトル! 二人を渡すんだ!」
その声に答え、落下していきながら彼は二人をルドガーに向けて投げ渡す。兜の下で自分の事を良く分かっていると笑いながら。大切な者の為なら自分の命すら惜しくはない。もし、どちらか片方しか生きられないのなら迷わずわが身を犠牲にする。“ルドガー”とはそういう男だ。
「ヴィクトルさん!?」
「ヴィクトル……あなた…っ!」
瓦礫を飛び移りながら今度こそ、しっかりとした地面に辿り着くルドガーに抱きかかえられながらフェイトは闇の底へと姿を消していくヴィクトルに手を伸ばす。少女の手に
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