最終話:帰るべき場所
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へなりと消えなさいとも言ったはずよ」
「母さんには、私は必要ないかも知れない。でも、私には母さんが必要なの!」
「私には関係がないわ! 目障りなだけよ! 私の目の前から消えなさい!!」
フェイトを見る目には軽蔑の色も狂気の色もなかった。ただ、そこには誰に向けているのかもわからない怒りがあった。彼女は思いつく限りの罵倒をフェイトに投げかけていった。ヴィクトルとクロノがそんなプレシアを痛々しそうに見た。必死に伸ばされる手を拒もうとしている。それはまるで、再び大切な者を失う痛みを感じたくないように見えた。
「あなたはアリシアじゃない! 私の娘はアリシアだけでなくてはならない!」
「それでも、私はあなたの娘! アリシアも私もあなたの子供!」
プレシアとフェイトという母娘は不器用な点がよく似ている。自分の様な極悪非道の女がこんなにも優しい少女の母親であってはならないと思い少女への愛を否定する。それが少女の為になると信じて。
本当はそんなことは必要なく、ただ母親としてその手で抱きしめ、愛していると言えばいいことに気づかない。いや、気づかないふりをしている。だからこそ『アリシアだけでなくてはならない』と叫ぶのだ。自分の娘は一人だけと、自分を騙して胸を押しつぶさんばかりの罪悪感から逃れるために。
「私はあなたを守る。あなたがそう望んでも、望まなくても―――あなたが私の母さんだから!」
フェイトがこれまでに出したどんな声よりも強く、大きく、叫ぶ。それを聞いたプレシアは苦悶の表情を浮かべ黙り込む。フェイトは母親の元へと一歩ずつ確かに歩みを進めていく。駆け出してしまえばあっという間になくなる距離。だが、二人にとってはどこまでも続いているかのような道だった。
そんな道をフェイトは歩いていく。プレシアは近づいて来るなと電撃をがむしゃらに放つがフェイトには当たらない。いや、母親として当てられないのだ。二人の距離が縮まり、手を伸ばせば届く長さになった時―――一際大きく、時の庭園が揺れた。
ぐらりと崩れるようにして―――フェイトが時の狭間へと落ちていく。
「フェイト!?」
アルフが茫然とした顔で手を伸ばしながら闇の中に飲まれていく主の名を叫ぶ。虚数空間は魔法が一切使えない空間だ。一度落ちてしまえば重力に従い永遠に落ちていき二度と抜け出ることはない。フェイトはそんな自分の運命を悟り、最後にポツリと呟く。
「母さん……幸せになってね」
「フェイトーッ!!」
辺りに一人の母親の絶叫が響き渡り、少女の伸ばされた手が掴まれる。少女の体は闇の中に投げ出された状態ではあるが落下を止めた。少女、フェイトは信じられないような物を見たような顔で自身の腕を掴む人物を見上げる。
「母……さん」
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