8部分:第七章
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第七章
「助かったんだな」
「天然痘から」
「あの人のお陰だよ」
彼はまた言った。
「天然痘が流行った村に来てくれてな」
「それでか」
「あんたを助けてくれた」
「そうしてくれたんだな」
「そうさ。あの人がな」
彼は話すのだった。
「カラミティ=ジェーンがな」
「あのカラミティ=ジェーンがか」
「そういえば結構色々な人を助けてるよな」
「そうそう、怪我してる大尉を救ったリしてな」
軍隊の斥候をしていたこともあるとだ。ジェーンは生前話していたのだ。
「それに郵便の配達の護衛をしたりもしてたな」
「困ってる人がいたらよく来てくれたよな」
「ただ。酔ってランプやら撃ち抜くだけじゃなかったからな」
「意外と義侠心とかあったからな」
「そういう人だったからな」
「ああ、それでだよ」
また話す彼だった。
「俺は助けてもらったんだよ、あの人に」
「そしてあの人の棺を閉めたってのか」
「そういうことなんだ」
「嬉しかったよ」
彼は微笑んで話した。
「あの人の棺。閉められてな」
「命の恩人の最後の最後な」
「閉められたからだな」
「お別れもしたよ」
その微笑みのままだ。話していくのだ。
「もうこれで終わりだってな」
「そうだな。カラミティ=ジェーンもいなくなった」
「もう西部の時代じゃないしな」
「フロンティアの時代じゃないんだ」
西部だけでなくアメリカ自体がだ。変わってきていたのだ。
「何もかもが終わって変わってくんだな」
「じゃあもうな」
「あの人とのお別れだったんだな」
「西部ともな」
「だろうな」
彼は言った。
「俺は。西部の古い時代の棺を閉じたんだな」
「カラミティ=ジェーンと一緒にか」
「そうなったんだな」
「ああ。それとあの人のカラミティは」
その仇名のことも話すのだった。彼女が気に入っていたその仇名のことを。彼女はこの仇名を終生愛していたのだ。自分自身もだ。
「災厄をもたらすんじゃなくてな」
「災厄を払ってくれる」
「そういう意味だったんだな」
「だから俺は助かったんだ」
その天然痘からだというのだ。
「だからな。あの人の仇名はな」
「災厄を取り払うってか」
「そういうことなんだな」
「ああ、そういう人だったんだよ」
彼は微笑んで話した。
「荒っぽいけれど。いい人だったよ」
こうジェーンのことを話すのだった。カラミティ=ジェーンはこの世を去った。そして西部の古い時代も。その彼女は今はワイルド=ビル=ヒコックの隣にいる。そして今も尚アメリカの古い時代の英雄として多くの人達の心に生きている。これからも永遠に。
カラミティ=ジェーン 完
2011・5・5
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