第4話「槍ニモ負ケズ」
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ザアザアと雨が降る中、お天気お姉さんは今日も天気予報を伝えていた。
【ハーイ結野です。昼間はまた予報はずしちゃってごめんなさい。明日の天気こそは必ず――】
【うるせェェェ!!何回天気はずしたら気がすむんだ小娘!!】
【当たらねェ天気予報なんてやめちまえ!】
【そうだそうだ。お前うざいんだよ!】
だが彼女に降ってくるのは罵詈雑言。
当たりもしない天気予報を聞く人はもはや誰もおらず、野次馬たちは容赦なく誹謗中傷を投げ飛ばす。
そんな騒々しい現場の中でも、結野アナはいつも通りにこやかな顔でカメラの前に立っていた。
その様子が気に食わないのか、群がる野次馬たちはゴミを投げ、注意するスタッフの声が入り混じる。
【モノを投げるのをやめてください。結野アナ危ないから逃げて!】
【それでは今日の天気をお伝えします】
【ちょっ何やってんの結野アナ!?…ああ!大丈夫結野アナぁ】
縁側に座ってそんな光景―テレビから流れる音声を耳にしながら、晴明は画面に背を向け雨に身を濡らしていた。
だが妹に降りかかる批判の嵐、そして何かがぶつかる物音にいてもたってもいられず部屋に駆けこんでしまう。
するとそこには、寝転がって何食わぬ顔でテレビを見ている銀時がいた。
「……ぬし、クリステルのファンなのじゃろう。よくも見られたものだな」
「ああ俺ドSなもんで」
平然と言って、銀時はテレビを見続ける。
「それに結野アナが耐えてんだから。それでも伝えようとしてんだから見なきゃいけねェでしょ、俺達も。ねェお義兄様」
「誰が『お義兄様』じゃ」
溜息をつきながらも、晴明は今やるべきことを悟った。
「わしが目を背けてはいかぬな。しっかりと己の目で見なければ」
晴明は銀時の横に座りテレビを見る。
そこには市民から叩かれてもゴミを投げられても、笑顔で天気予報を伝える妹がいた。
雨の日でも風の日でも、クリステルがお天気を伝えない日はなかった。
どんな強風にも屈せず立ち続け、今こうして罵倒を浴びても弱音一つ見せずに笑顔で市井を元気づけようとしている。
もし自分が同じ立場であっても笑ってはいられない。いや、あの場に立つ事すらできないだろう。
そう、妹は強い。兄である自分よりも。
なのに格式を守るための道具にした。
「わしはな、以前結野衆頭目としてお家を守ろうとするあまり、その使命に目がくらんでおった」
寝転がる銀時に晴明は言った。
全ては両家の深き因縁を絶ち切り、もうこれ以上対立の溝を深めないために。
何をしても厭わないと思った。平和協定を結べば争いも憎しみも消え、共に手を取り合う未来が見えると信じていた。
だがその先に見えたのは、やせ衰えていく妹の姿。
失ってやっと気づいた。自
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ