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【銀桜】7.陰陽師篇
第4話「槍ニモ負ケズ」
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 ただ妹を護りたい想い一つだけ。
――……そうだったな。
――何かを護ンのに、理由なんているかよ。
――俺にとっちゃ双葉(アイツ)は大切な妹。
――そんだけだ。
 戸惑うことなかった。ためらうことなかった。
 負い目があろうとなかろうと、そんなの関係ない。
 ただ護りたいんだ。
 大切なモノを護りたい一心で、刀を振るっていたあの頃のように。
 昔も、今も、これからも妹が大切であることに変わらないから。
――……たく、俺ァとことん情けねー兄貴だな。
 心の中で呟きながら、銀時は自嘲でも皮肉でもない微笑を浮かべる。
 そして木刀を腰に携えて、雨が降る中傘もささず縁側を降りた。


「銀時様。どこへ行くつもりでござんすか?」
 いつの間にか部屋でせんべいをボリボリ食べる外道丸に呼び止められ、銀時は懐にしまっていた回覧板を取り出した。
「なぁに、お隣さんちに回覧板届けに行くだけだって」
「ボロボロの紙持ってってどうするでござんすか」
 外道丸の言う通り、回覧板に挟まった町内会秋旅行のお知らせの連絡網は、雨に濡れて字が滲みほとんど読めなくなっていた。
 それを見て銀時は不満そうに口を尖らせる。
「何でもかんでも濡らしやがって。この雨いつになったら止むのかねェ」
「さあ。あいにくあっしは天道は読めないでござんすから、何とも言えやせん。ただこれだけは言える。晴明様は死ぬでござんす」
 無表情に外道丸は断言した。
 千年以上両家の力は互角だったが、巳厘野衆頭目の道満がとてつもなく強大な力を身につけたことで戦況は一気に変わった。
 なぜ急に強くなったのかは不明だが、頬に刻まれた邪印から晴明に勝ちたいが為に道満は外法に手をつけたのだろう、と外道丸は言う。
 それでも最強と謳われる晴明に勝機がないわけじゃない。
 ただ江戸守護のために無数の式神を配して力が分散している状態の霊力が弱まった晴明には、ほぼ勝ち目がないのだ。おそらく晴明は全ての責任を自分の命で償おうとしているのだろう。
 このまま晴明だけなら、結野衆と巳厘野衆の因縁の結末がどうなるか見えている。
 そう、彼一人だけなら。
「俺達が行けばそいつは変わるのか」
「……銀時様、こういっちゃなんですが、これ以上この件に深入りするのはよしなんせ」
「おいおい。ドロドロのご近所トラブル見せつけておいて全部忘れろってか。目ん玉に焼きついた衝撃 映像はレコーダーみてェにポンポン消せるモンじゃねーんだよ」
「銀時様、あっしがあなたのお傍にいたのはあなた達を守護する為でも敵を退ける為でもありやせん。あっしは『妙な件に深入りするようならこれを阻止しろ』とあなた達の命を最優先に行動するようクリステル様に命じられてきたのでござんす」
「……つまりテメーはただの見張りか。最初から
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