第4話「槍ニモ負ケズ」
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なんでああもしつこく呼んでたのか分かる気がする。アイツもこんな気分からだったんだろうか。
どうであれ、今ならアイツと酒飲んで笑い合えそうだ――とほんの少しだけ思える。
だが、それは決して叶わない。
もうアイツは――
「なら余計やめんか。『お義兄たま』って気持ち悪いぞ」
「いや〜俺ずっと兄貴やってましたから『弟』って奴になってみたいんですよ、たまきん兄さん」
「『たまきん兄さん』って何?最早たまきんの兄さんになってるよね。どんどん悪質になってるぞ。フザけておるのか!?」
「それで行く気なんですか。勝ち目なんてないでしょうに」
気の抜けた表情は変わらないが、不意に真面目な目つきになって銀時は話題を戻した。
呪法デスマッチは両陣営から三名の選出だが、結野衆の陰陽師は先ほどの巳厘野衆の呪法によりほとんど倒されてしまった。
今戦えるのは頭目の晴明一人だけ。数だけ見れば圧倒的に不利である。
「……言ったはずじゃ。この件は全てわしに責任がある。わしが一人で決着をつけねばならんのじゃ。 クリステルの盾はもうわししかおらん。妹を護るのが兄の務めであろう」
晴明の言葉は銀時に重くのしかかった。
晴明は一人の妹の『兄』だ。銀時もまた一人の妹の『兄』であり、二人は同じ立場の人間だ。
どちらも妹を傷つけてしまった『兄』。
攘夷戦争で銀時は大切なモノを護るため戦場に立った。やがてそこには双葉も立つようになった。
それは双葉自ら望んだ事だ。彼女も護りたいモノのために、刀を振るう決意をしたのだ。
兄として最初は反対した。だが双葉の意志は本物で、刀を手にすることを許した。
それは戦いの苦痛も辛さも全て背負わせることだとわかっていた。だが、それが妹の決めた道なら止める理由はどこにもなかった。
しかし、双葉に降りかかったのは全く別の苦しみ。
戦いの中で目覚めた感情に双葉が溺れたことを知っていた。
それでも、妹を立たせてしまった。
血の狂気の中に。
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止められただろう。
血を求め、狂気に溺れた妹を止めることができただろう。
いや、兄である自分が止めるべきだった。
……だが、そうしなかった。
大切なモノを護るために戦っていたはずなのに……ただ傷つけただけ。
――妹も護れねェ駄目な兄貴だな、俺ァ。
――………。
――……今さらウジウジしたって仕方ねェだろ。
つまずいたのを石ころのせいにしたところで何も変わらないし、振り返ってその場でジタバタするくらいなら、前を向いて歩いていこう。
そうして自分なりの生き方《ルール》を通してきたが、今になって――双葉と再会してから、本当にそれでいいのか分からなくなってきた。
双葉は時々おかしい。どこも見ておら
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