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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三十二話 真の勝利
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ば他人を食い物にする外道ととらえられるだろう。

だが、彼女は違う。同じ言葉でも彼女は受け継いでいるのだ。
他人の死を背負える人間は少ない。
死と正面から向き合える人間は限りなく少数だ。

死を前に多くの人間は自分も同じには成りたくないと思う。それは死と向き合っているように見えて実際は逃げているだけなのだ。
今の彼女は死と向き合うだけではない、それすらも背負うことで苦難を乗り越えてゆける。

そんな確信を持つには十分だった。
こんな年端もいかない娘がその強さを持てたのは何も惨劇を目にし、強くなるしかなかったから……それだけでは無いはずだと、彼女とその隣に立つ青を纏う戦友の揃踏みが教えてくる。

「僕が言う事ではないだろうけどどうか覚えていて欲しい。僕が望むのは彼女の敵討ちじゃない……それは僕の手で果たさなければ何の意味もないから。
 僕は、君にも幸福になってほしい。せっかく生き残ってきたんだ、幸せにならなければ嘘だ。
―――侵略者相手に刺し違えてもそれは敗北でしかない、君は生き残り幸福になってこそ真の勝者となる。それをどうか忘れないでほしい。」

「はい、胸裏に銘記します。……一番の難関はもうクリア済みですから。」

甲斐の言葉に頷いた唯依は自分の(かたわ)らに立ってくれていた忠亮を見上げた。
その視線と、先のやり取りから忠亮が妻に迎える女性とは誰なのかはもはや完全に明白だった。

「そうか、なら安心だ。……彼女を頼む。」
「己の全霊を懸けてその期待に応えよう。」

唯依の言葉に再び目を細める忠亮……悲劇だけではない、確かに多くの悲劇はあった。失った者は帰ってこない。
だけど、そんな憎悪と憤激の坩堝の中からも次は生まれてくる……この地獄の中にも花は咲く。

それは希望だ。この時代を終わらせさえすれば再生するという希望なのだ。
ならば、この希望を守るために戦うのも悪くはない……かつての武士、修羅:甲斐朔良はそう思った。



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