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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三十二話 真の勝利
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「でも……」
「篁中尉、そんな時は謝るよりも“ありがとう”。その一言でいいんだよ。」

言い淀む唯依、そんな事を言っていれば忠亮がまた無用と両断するのは想像難くない。
微妙に似た者同士のやり取りを微笑ましく見る甲斐朔良は穏やかな声で告げる。

「……お兄さん。」
「うん、言ってあげるんだ。……彼はへそ曲がりだからね、素直に存外弱い。」

「甲斐、余計なことを言うな。」

眉間に眉を寄せる忠亮、武人としての性か他人の本質を見抜く事に優れている忠亮だがそれは逆に本質を見抜かれるのを苦手とする面があるという事でもあるのだ。

内面を見抜かれれば其処から得意とする技の傾向を見破られる危険がある為、どこか本能的に忌避感を持ってしまうのだ。

そんな痛いところを突かれた忠亮の腕の中で唯依が小さく、くすりと笑いを零し、そして礼を言う。

「……忠亮さん、ありがとうございます。」
「――軍務中だぞ。」

「はい。」

そんな唯依の言葉に余計に顔を顰める忠亮は軍務中だという事を言い訳に逃げるしかなかった。
それは―――張りつめた余裕のない生き方しかして来なかった唯依の変化に戸惑っていたからだった。

しかし、いま彼女が対峙すべき運命は目の前にあったのを忘れてはいけない。
唯依の体を抱き起しつつ耳元で囁く。

「……唯依、大丈夫か?」
「少し怖いです……一緒にいてください。」

自分の軍服の胸元を掴む唯依の手が震えていることに気づく。そして唯依の願いに首を縦に振った。
支えられてばかりだった自分が彼女を支えている実感がどこか心地よかった。
そして心の中で”どうか唯依が己の運命と対峙するこの試練を乗り越えれるように”と、神に祈るように唯依の中に眠る勇気に祈った。


「―――お見苦しいところをお見せしました。」
「いや、見苦しいとはとんでもない。それに君がそんな風になるほどに志摩子たちの事を気に病んでくれている事、義兄として嬉しく思う。
 あの子は君が大好きだったからね、口を開けば君の事ばっかり……たぶん、志摩子は君に出会えて幸せだったよ。
たとえその結末が報われないモノだったとしても、たぶん……幸せだったと思うよ。」

「はい、志摩子は何時も私のフォローをしてくれていました。いつも、本当にいつも……自分のことで手いっぱいだった未熟な私は彼女がいなければきっと、多くの事を成せなかったでしょう。
 でも、もう彼女に頼っては居られません。彼女の死を糧とし、私の戦いを完遂することで彼女の死は無意味ではなかったと証明して見せます。」

「―――やっぱり、あの子は果報者だよ。」


凛とした、まっすぐな眼差しで自分を見据え言い切る篁唯依に目を細める甲斐朔良。他人を糧に、そう言葉だけで捉えれ
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