sts 10 「夜のひと時」
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のようによく食べる人間ならばともかく、私のようなタイプはこの手のことを恥ずかしいと思ってしまうわけで。異性に聞かれれば尚更……。
「そうか、なら最低でも一旦ここで休憩するよな?」
ショウさんは別に笑ったりはしておらず、手に持っていた何かを私の方に差し出してきた。視線で何なのか尋ねると、開ければ分かるといったように返され、疑問を抱きながらも私はとりあえず受け取ることにした。
「……これは」
渡されたのはバスケットで、中にはサンドイッチと水筒が入っていた。すぐさま視線をショウさんに戻すと、木にでも寄りかかって食べろと言わんばかりに視線で返事をされる。
彼から施しというか差し入れをもらう理由はなかったのだが、疲労が溜まり空腹を覚えている今の私に断れるはずもない。なので感謝の言葉を口にして移動する。
もしも私の心境を知っている人間がいれば感謝するのかって驚いたかもしれないけど、私にだって常識はある。感謝の言葉くらい言うに決まってるわ……小声だったけど。
「……美味しい」
空腹は最大の調味料と言われるが、それを抜きにしてもこのサンドイッチは美味しいと思ったはずだ。何となく作った人物に心当たりはついていたのだが、女としてのプライド故なのか確認せずにはいられなかった。
「あの……これ、ショウさんが作ったんですか?」
「まあな。育った場所が違うから口に合うかどうか不安だったけど……美味しいと思ってもらえたのなら何よりだ」
一流のメカニックでもあり、隊長達に匹敵する実力を持った魔導師でもある。お菓子作りも上手で、そのうえ料理もできる……どこまでこの人は才能に溢れているんだろう。
そんな風に思いもしたけど、今の私が文句を言えるはずもなく……口に出るのは料理の感想や感謝の言葉だけだ。
「……ショウさんってお菓子もですけど、料理も作るの得意なんですね。どうやったらそんな風に上手くなるんですか?」
元々才能があったんでしょ、とでも言いたげな口ぶりに後半はなってしまった。あちらからあまり話しかけてはこないし、沈黙が妙に気まずいので自分から行ったわけだが……大人しくしておいたほうがよかったかもしれない。
「どうやったらか……誰かの喜ぶ顔が見たいからとか、興味があることだったから。そういうのも理由なんだろうけど、最大の理由は自分でやるしかなかったからかな」
「え……それって」
「ああ。俺の両親はもういない……亡くなったのは俺が小学校に上がる前だから、13年くらい前になるかな」
「……すみません」
「別にいいさ。叔母が一緒に居てくれたから独りじゃなかったし……俺みたいな境遇の人間は世の中にたくさんいるよ」
確かに幼い頃に両親を亡くしている人間はこの世界にたくさんいるだろう。私もそのひとり
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