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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン26 鉄砲水と真紅の瞳
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響をもろに受けていた。あのころはまだ制御の方法が全然わからなかったから、やたらと攻撃的で後先を一切考えない、ちょうど先代の呪いを受けてた時期みたいなことになってたっけ。
 だけど、そう考えれば吹雪さんの考えにも一理あるのかもしれない。毒を以て毒を制す、というわけか。

「(実際どうなの、チャクチャルさん?)」

 とはいえ確認を取らないことには不安なので、ここは脳内で専門家に問い合わせてみる。わりと即答が多いチャクチャルさんにしては珍しく少しの間考えていたふうだったが、ややあって答えが返ってきた。

『間違った話ではない。その男が何らかの外部的な要因で心の闇を増幅されているなら、という前提があってこその話だが。ところでマスター、この男の狙いはもう勘付いているか?』
「(そりゃまあね。ありがとー)」

 闇のプロから言質もとれたので、改めて吹雪さんに向き直る。そう、ここまできたらいくら僕でもこの人が何を言いたいかぐらいわかる。何も言わずにデュエルディスクを起動させ、デュエルするには距離が近すぎたので少し吹雪さんとの間隔を取る。

「………すまない。だけど誤解しないでくれ、僕は無理強いする気も、強制する気もないんだ。だけど、どうしても怖いんだ。ダークネスの力を使うことが」
「気にしないでください、吹雪さん。そのマスクをつけて、デュエルしましょう。もしまたダークネスに飲み込まれたら、力技でもう一回引っぺがしてあげますよ」

 要するに僕はこれから、吹雪さんがダークネスの力に慣れるための予行の相手をするわけだ。確かに明日ぶっつけ本番でダークネス化してもしもそのままダークネスに呑まれることのリスクを考えると、この特訓は不可欠といえる。今ならたとえダークネスの制御に失敗しても、去年と同じく僕が勝てばダークシグナーの力でまた封印することができる。
 だけど根はまじめで優しいこの人のことだ、ここに来るのだって悩んで悩んで悩みぬいてのことだったに違いない。僕にもう一度ダークネスの相手をさせていいのか、と。それでもこの人は、苦しみながらもカイザーのために僕に頭を下げることを選んだ。本当は僕だってダークネスの相手をするのは怖い。だけど、吹雪さんは僕ならたとえ自分が暴走しても止めてくれると信じてくれた。なら、万が一のことがあってもその期待に応えよう。それがデュエリストとしての、というより遊野清明としての生き様だ。
 吹雪さんが震える手で手にしたカードを引きちぎると、そこにはカードの切れ端ではなく鼻から上を覆い隠すブラックマスクが握られていた。ゆっくりとした動作で、それを顔につけていく。その目が完全に覆われる直前、最後に一瞬だけ不安と恐怖と罪悪感でいっぱいの吹雪さんの目が見えたので、せめて僕への罪悪感だけでも薄まるようにと笑いかけてみせる。


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