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戦国異伝
第二百十話 夜の戦その十二

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「よいか、ここはじゃ」
「はい、退く敵軍をですな」
「このまま」
「追うぞ」
 そうするというのだ。
「よいな」
「そして出来る限りですな」
「討ちますな」
「そうしようぞ」
 こう言って追撃にかかる、だが。
 片倉の守りは強く柴田といえど中々攻めきれない、しかもだった。
 氏家が柴田のところに来てだ、こう言って来た。
「伊達政宗でござるが」
「うむ、去ったか」
「いや、機を見るのに敏で」
 それで、というのだ。
「逃げられました」
「左様でござるか」
「それでこちらに来た次第」
 こう言うのだった。
「伊達政宗は他の者達が追っているでござる」
「ふむ、しかし」
「しかしでござるな」
「伊達政宗も只者ではない故」
 だからだというのだ。
「追いつけぬかと」
「確かに。その様な迂闊な御仁ではござらぬな」
「ここでも」
 片倉の後詰もというのだ。
「中々攻めきれてござらぬ」
「その様ですな」
「ここは猪苗代まで下がられるか」
「では権六殿」
 氏家はここでこう言ったのだった。
「向こう岸の殿に」
「連絡をして」
「渡ってもらいましょうぞ」
「確かに。それならば」
 柴田も氏家の言葉に頷いてだ、そしてだった。
 彼は戦いつつも信長に使者を送った、信長もそれを受けて言った。
「よし、ではじゃ」
「それではですな」
「これより」
「うむ、夜が明けたらな」
 その時にというのだ。
「川を渡りじゃ」
「そして、ですな」
「そのうえで」
「決戦に向かう」
 あらためてというのだ。
「そうするぞ」
「はい、では」
「朝になれば」
「我等はですな」
「川を渡るのですな」
「そしてじゃ」
 そのうえで、とも言うのだった。
「いよいよな」
「伊達政宗とですな」
「遂に」
「決戦じゃ」
 それを行うというのだ。
「そして米沢も手に入れ」
「独眼龍も」
「殿が」
「楽しみじゃ」
 実際に笑って言うのだった。
「あの者も加えるとなると」
「だからこそですな」
「ここは是非」
「川を渡り」
「そのうえで」
「天下布武をさらに進める」
 政宗とその家臣、領地も手に入れてというのだ。
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