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戦国異伝
第二百十話 夜の戦その八

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「そうなります」
「そうじゃな、では」
「はい、ですから」
 それで、というのだ。
「あそこにいる兵は少なく」
「あえて多く見せ」
「そして我等に自分達を見させ」
 片倉は成実にその目を鋭くさせて述べた。
「一部の兵、騎馬隊に密かに川を渡らせ」
「来ておるな」
 ここで政宗からそのことを伝える伝令が来た、片倉と成実はその伝令の言葉を受けて確信した、それでだった。
 即座にだ、兵達に言った。
「来るぞ、横じゃ!」
「敵は横から来るぞ!」 
 咄嗟に兵達に対して叫んだのだ。
「正面から敵は来ぬ!」
「横からじゃ!」
 まさにそこからだというのだ。
「槍を向けよ!」
「鉄砲を構え!」
「弓矢も忘れるな!」 
 こう次々に命じてだった。
「よいか、敵が来ればじゃ」
「迎え撃て」
「よいな、そしてじゃ」
「ここを守るのじゃ」
 二人で兵達に指示を出す、それにより場は一瞬騒然となった。だがその騒然としたものは一瞬のことですぐにだった。
 伊達の兵達は備えた、弓矢も鉄砲も構え。
 そのうえで敵を待った、すると。
 大きな声と共にだ、柴田率いる伊達の騎馬隊が出て来た、そして。
 その伊達の軍勢に突進して来た、その彼等に対して。
「よし、来たか!」
「来たな!」
 片倉と成実は夜に慣れた目で彼等を見て言った。
 そしてだ、すぐにだった。
「撃て!まずは鉄砲じゃ!」
「それから弓矢じゃ!」
「槍も忘れるな!」
「そのまま迎え撃て!」
 こう言って迎撃せんとするのだった、だが。 
 そのまさに撃つ直前にだった、不意に。
 対岸の織田軍が動きだ、大きな声を挙げて来た。
「よし、船が着いたぞ!」
「渡れ!」
「船に乗り川を渡れ!」
「急ぐのじゃ!」
「!?」 
 その声を聞いてだ、さしもの片倉と成実もだった。
 不意に動きを止めてだ、その織田軍の方を見た。
「何じゃ!?」
「船が来たというのか!」
「まさか九鬼嘉隆の水軍か」
「水軍が来たのか」
 こう言うのだった、驚き。
 ことの真意はわからない、だが。
 その一瞬のことにだ、不意に。
「今じゃ!」
「突っ込め!」
 柴田達がこう叫んでだった。
 そのまま騎馬隊を突っ込ませた、これにだった。
 伊達の軍勢は鉄砲と弓矢を撃つ間もなくだった、かろうじて槍で騎馬隊を防ごうとした。だがそれは間に合わず。
 攻め込まれた、突き崩されはしなかったが戦に入った、柴田は果敢に攻めさせた。
「掛かれ!」
「はっ!」
「このまま!」
「絶えず攻めよ!」
 柴田らしい指示を出すのだった。
「そしてじゃ」
「はい、そうして」
「伊達の軍勢を崩し」
「向こう岸におる軍勢を渡らせるのじゃ」
 その川をというのだ。
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