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戦国異伝
第二百十話 夜の戦その七

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「ああしたことを考えついて戦に使う」
「それだけでもですな」
「相当ですな」
「しかもじゃ」
 それに加えてと言う柴田だった。
「その兵を存分に使い勝ちな」
「伊達を百万石にした」
「そこまで大きくしたことも」
「見事じゃ」
 こうも言うのだった。
「やはり殿が欲しがるだけ御仁じゃな」
「ですな、では」
「権六殿、ここはどうされますか」
「うむ、攻める」
 実に柴田らしい言葉だった。
「このままな」
「殿の仰った通りに」
「川岸を守る伊達の軍勢を、ですな」
「あの鉄砲騎馬隊ではなく」
「あの者達を」
「鉄砲騎馬隊は次の機会じゃ」
 その時に戦う、だが今はというのだ。
「次の機会で攻めるからな」
「はい、では」
「それでは」
「ここはすぐにですな」
「この場を離れますか」
「行くぞ」
 ここまで言えば迷わなかった、それでだった。
 柴田は安藤、氏家、稲葉、不破の美濃四人衆にはだ。こう言ったのだった。
「では我等が攻める」
「うむ、ではな」
「我等は我等の兵を率い伊達政宗の鉄砲騎馬隊の周りを進み」
「攪乱してな」
「足止めじゃな」
「殿の仰った様に頼む」
 信長の命の通りとも言う柴田だった。
「我等もその様にするからな」
「ではな」
「ここは任せてもらう」
「御主達は伊達の兵を横から攻め」
「そうしてな」
「あの兵を崩しじゃ」
 そして、というのだ。
「川岸の兵達が川を渡れる様にする」
「そういうことじゃな、ではな」
「ここは頼んだぞ」
「それではな」
 こう話してだった、柴田は政宗のことは安藤達に任せた。そうして自身は騎馬隊の主力を率いてそのうえでだ。
 片倉と成実が率いるその伊達の軍勢に向かった、その時片倉は成実と共に川の向こう岸の織田んお大軍の松明を見ていた。
 その無数の松明を見つつだ、片倉はふとだった。
 成実にだ、いぶかしむ顔でこう言った。
「どう思われますか」
「うむ、最初は援軍が来たと思ったがな」
 成実も片倉にいぶかしむ顔で応える。
「どうやらそれはな」
「違う様ですな」
「あの数ならばじゃ」
「はい、その数に任せてです」
「川を渡ろうとしてくる」
「数はこちらの方が遥かに少ないのです」
 その数のことがあり、というのだ。
「十万以上、あの松明は十五万はいますが」
「その数ならばな」
「渡れます」
 その数に任せて、というのだ。
「無事に」
「そうなるな、では」
「それで渡らぬのは」
「数がな」
「はい、そこまでいないからです」
「ではあの松明は」
「幾分かただ照らしているものです」 
 実際の兵の数とは違うというのだ。
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