第二章
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「難儀なことじゃ、後半期待しとるわ」
「そう、後半ね。ってまだ五月じゃない」
「それでもじゃ、粘りがうちじゃ」
広島の特徴だというのだ、一点を必死に取って守る。伝統的のそれが広島東洋カープというチームの野球である。
だからだ、千佳も言うのだった。
「その粘りを忘れんことじゃ」
「それで後半なのね」
「そういうことじゃ」
千佳は沈みきっていたが完全に諦めてはいなかった、それでだった。
クラスの自分の席でだ、祈祷をはじめてだ。こう言うのだった。
「困った時は厳島大明神がおられるわ」
「ああ、広島の」
「そうじゃ、毛利元就さんも守ってくれたしのう」
「平清盛さんもね」
「清盛さんを一人だけ庇った心優しい神様じゃ」
「それでその厳島大明神様がっていうのね」
「カープを守ってくれるわ」
絶対にと言いだ、そうして。
千佳は自分の席でカープの勝利祈願をした。もっと言うと優勝祈願を。
それをし終えてだ、こう言ったのだった。
「うちの兄貴もこうじゃ」
「ああ、お兄さんね」
「そうじゃ、流石に左道には手を出しとらんがのう」
「お兄さん凄い虎キチだからね」
「身体に阪神液が流れとるわ」
少なくとも妹がこう言う程の人物だというのだ。
「黒と黄色ののう」
「千佳ちゃんは赤よね」
「当たり前じゃ、わしの色は赤じゃ」
誰でもそうだと誰かが突っ込むところだが千佳は違っていた。
「カープの色じゃ」
「そうよね」
「赤じゃ、わしの色は赤じゃ」
「実際持ってるものも赤ばかりだしね」
「カープレッドじゃ、それで兄貴はじゃ」
「黒と黄色よね」
まさにその色こそだ。
「阪神の」
「兄貴最近やさぐれとるわ」
「阪神もあれだから」
「そうじゃ、家でも怒ってばかりじゃ」
「それは千佳ちゃんもよね」
「そうじゃ、どんなものじゃ」
こうしたことを話してだった、千佳は。
その手にしゃもじを出してだ、こんなことも言い出した。
「もっと勝たんとあかんのう、ファンも気合入れて応援せな」
「チームの調子が悪い時にこそよね」
「そうじゃ、いつも以上に応援したるわ」
実際に千佳の応援は熱くなる一方だった、それは兄の寿も同じだった。彼は阪神だったがその阪神の調子も悪いからだ。
家でだ、母に言っていた。
「お母さん、今日はお好み焼きにしてや」
「それでお好み焼きの黄色に?」
「ソースかけてや」
「その黒でよね」
「黒と黄色や」
この色にするというのだ。
「阪神の色にしてげん担ぎや」
「それげん担ぎなの?」
「そう聞いたわ、それでやったるわ」
「確か昨日はステーキにカツって言ってなかった?」
「昨日は昨日、今日は今日でじゃ」
「縁起を担ぐのね」
「やったるわ、それで阪神今年こそ優
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