九話:フェイト・テスタロッサ
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されたからだろうけどな」
チラリとヴィクトルを見つめ棘のある言葉を吐くルドガー。ヴィクトルは言われても仕方がないことをしたのだと思い、黙ってその言葉を脳裏に刻みつける。そんな姿に本当にどうしてこの男があんな真似をしたのだろうかと彼は納得のできない気持ちになりながらも話を続ける。
「エルはたくさん苦しんだけど……今はきっと笑ってるよ。俺がこの命を差し出して守り抜いて―――エルの全てを肯定したからな」
「全てを肯定……」
「フェイト、俺はお前の気持ちは分からない。でも、これだけは断言できる。無限のもしものフェイトが居たとしても、俺達は―――今ここに居るフェイトを選ぶ」
ルドガーの言葉にフェイトは何も言うことが出来ずにパクパクと口を動かすだけだったがその心にはじんわりと暖かい物が広がっていた。なのはやユーノ、アルフはルドガーの言葉に笑顔で頷きフェイトを見つめる。
「……フェイト。私はかつて娘に拒絶され、一度死んでからようやくある事に気づけたのだ。本物も偽物もない。同じ人間などこの世に存在しないだと……。私と約束をしたフェイトは君だけだ」
「ヴィクトル…さん」
「アリシアの記憶を引き継いでいたとしてもそれは思い出ではない。君には確かな思い出があるはずだ。アリシアではなく―――フェイト・テスタロッサとしての思い出が」
フェイトの脳裏に浮かぶのは初めてヴィクトルと会った日の思い出。アルフとヴィクトルの三人で本物の家族のように食事を摂った思い出。月の綺麗な夜に約束を結んだ思い出。知らず知らずの内に彼女の目からは涙が零れ落ちて来る。
「私は…フェイト……フェイト・テスタロッサ!」
「フェイトぉ!」
「アルフ、もう大丈夫だよ。私、母さんに会って話がしたい。ヴィクトルさんも手伝ってくれますか?」
「勿論だ。約束したからな」
立ち直り強い意志を瞳に宿すフェイトに満足気な微笑みを浮かべてヴィクトルは頷く。さらには、なのはやユーノ、ルドガーも自分も連れて行って欲しいとフェイトに頼む。その事に驚いた表情を見せるフェイトだったが、すぐに他の誰でもない自分を助けてくれる人間がこんなにもいるのだという喜びから笑みを浮かべる。
「行こう、全てを終わらせに……。ううん、全てを始まらせに!」
本当の意味での母娘になるために少女は母の元へと歩みを進み始めるのだった。
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