第四話 情報戦
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バオウのようなやからには持論を展開させることを批判するように、客観的な観点からの正論を叩きつけた」
リュウヤは二口目を口にする。
二口目はゴーヤーのような苦味がたっぷりと入っていて、以前食べたことのあるアルゴは急いで水を流し込んだものだ。
だがリュウヤはそんなもの苦にもせず悠々と咀嚼している。
「これで、全員が誰も批判できない緩やかで安心感のある世界の完成だ」
リュウヤは誇ることもなく、ただ淡々と真顔で事実を口にする。
だが、一つだけ抜けている事実が存在することにアルゴは気づいていた。
それを声に出そうとしたその先に、彼自身から答えを吐き出した。
「そして、その先にあるのはーーー」
正論という名の暴力を振るった為政者への憎悪
「な?キチンと『全員』に分けてやってんだろ?」
彼は本当に理解している。自分がどれだけのヘイトを稼いでいるかを。
アルゴは身震いする。もしかすると、この男は、『この世界全て』を敵に回しても、アルゴの仮想の瞳に映る“冷笑”を浮かべるのではないかと。
三口目でリンゴを丸ごと食べきったリュウヤは手をパンパンと払い(仮想世界では大した意味をなさないが)じゃあな、とひらひら手を振ってその場を去っていった。
アルゴはただ立ち尽くす。
彼女の予感が、彼女に恐怖を与える。
キリトは、上層に上がるにつれ、どんどんと強くなっていき、『最強』の名を手にするだろう。
アスナは、その類稀なるセンスとリーダーシップで、《フロアボス攻略集団》をまとめ上げるほどの人物になり、やがて二つ名を得て光り輝くだろう。
そしてリュウヤは、あの冷笑をモンスターに浴びせ続け、やがてはモンスターだけでなく、プレイヤーたちにさえ、恐怖と畏怖を抱かせる日がやってくるだろう。
そんな予感を振り払いつつ、アルゴはベッドに倒れていった。
「う〜ん、しゃべりすぎたか?」
一人トボトボと宿屋を目指すリュウヤはゴチる。
今回リュウヤがアルゴに接触した目的は、彼女の《情報屋》としての腕を見極めるためだ。
逃走の仕方から始まり、臨戦態勢時の雰囲気、異常事態時の冷静な対応と状況判断、瀬戸際での彼女の思考力、動揺した際の反応の良し悪し。
そして情報量の次に一番大事な『言葉の駆け引き』。
「まあだいたい大丈夫じゃないかな〜」
ヘラヘラと笑いつつ、彼女の《情報屋》の腕を認める。リュウヤも割とポーカーフェイスは得意な方だと自負しているし、相手の反応でいくばかか相手の心の内を読むことは可能だ。
「でも、“ハッタリ”に気づかなかったのは惜しかったなぁ」
リュウヤの言うハッタリ、それは「最西端の村にある秘クエ」だ。
そんなものは
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