4部分:第四章
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れますか」
「わしは何も言わん」
確かな言葉だった。その目も。
「好きにするといい。そうしたい者はな」
ここまで言った。しかしだった。
誰も立ち上がろうとしない。動こうとしない。誰一人としてだ。
富樫はその彼等を見てだ。そうしてであった。
落ち着いた声でだ。こう彼等に言うのであった。
「では酒を用意せよ」
「酒ですか」
「それをでございますか」
「捕らえはせぬ。しかしだ」
それでもだというのである。
「弁慶殿の忠義にだ。酒を差し上げよう」
「そうですな。それでは」
「今から弁慶殿のところに向かい」
「そうしてですね」
「そうだ、差し上げるとしよう」
捕まえはしないが追う。今はそうするというのだ。
「ではな。よいな」
「はい、それでは今より」
「義経様達のところに向かい」
「そうしてですね」
「そうするぞ。いいな」
こうしてであった。富樫は酒を用意させそのうえで義経達を追うのであった。
経つその前に頬を拭った。そこにあるものは。彼が今まで感じ取った中でだ。最も熱く澄んだものであった。
富樫 完
2011・2・26
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