暁 〜小説投稿サイト〜
富樫
4部分:第四章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
れますか」
「わしは何も言わん」
 確かな言葉だった。その目も。
「好きにするといい。そうしたい者はな」
 ここまで言った。しかしだった。
 誰も立ち上がろうとしない。動こうとしない。誰一人としてだ。
 富樫はその彼等を見てだ。そうしてであった。
 落ち着いた声でだ。こう彼等に言うのであった。
「では酒を用意せよ」
「酒ですか」
「それをでございますか」
「捕らえはせぬ。しかしだ」
 それでもだというのである。
「弁慶殿の忠義にだ。酒を差し上げよう」
「そうですな。それでは」
「今から弁慶殿のところに向かい」
「そうしてですね」
「そうだ、差し上げるとしよう」
 捕まえはしないが追う。今はそうするというのだ。
「ではな。よいな」
「はい、それでは今より」
「義経様達のところに向かい」
「そうしてですね」
「そうするぞ。いいな」
 こうしてであった。富樫は酒を用意させそのうえで義経達を追うのであった。
 経つその前に頬を拭った。そこにあるものは。彼が今まで感じ取った中でだ。最も熱く澄んだものであった。


富樫   完


                2011・2・26

[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ