暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
案内人とのひと時
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哺乳類を喚起させられる雰囲気を漂わせる藍色の大きな瞳が輝き、小ぶりな鼻と色の薄い唇がそれに続く。しかしそれらはサンドカラーのマフラーに少し隠れてしまっている。

猫、というよりは野山に放たれた山猫のようだ。

街道を交わし歩くのが、軒並み筋骨隆々の戦士(グラディエーター)みたいなアバターばかりなので、GGOのサイバーパンクな雰囲気のなか一人だけどこか神秘的な香りを漂わせる少女は人込みからかなり浮いている。

と、自分達のことは惑星重力圏外までほっぽり出すレンとユウキに、突如もろもろの荷物が押し付けられた。

驚く二人が振り返る頃には、リラとミナはすでに駆け出していた。

「え?な、なにっ!?」

「ぅおーい……って聞いてないかあの様子じゃ」

あっちが山猫なら、こっちはウサギのように、瞬く間に人と人の間に飛び込んでいく後姿を見送りながら、レンとユウキは小さくため息をついた。

「ユウキねーちゃんが行ってきて、僕はここで荷物番してるから」

「う、うん。わかった」

ごめんね、と謝りながら行きかうマッチョマンの群れの中に消えていく従姉の姿をゆっくり見送った後、レンは大荷物を苦労して引きずりながら街路の壁面に引きずって行った。敏捷値に極振りしているレンに、弾薬やら銃器やら防弾アーマーやらを山ほど詰め込んでいる荷物を軽々と扱えるほどの筋力値は皆無である。

苦心しながら運び、額にうっすらと浮かんだ汗を拭っていると、街道の側面を囲む家と家の間、等間隔で立つナトリウム灯の光も届かず得体のしれない闇がわだかまっている隘路。その奥底から突然、抑揚のない声が届けられた。

「遅かったな《冥王》」

「………………」

声がかかるまで、気が付かなかった。

比喩抜きで、レンはその路地に誰もいないと一瞬前まで確信していたのだ。確かに、クエストが終了した直後で油断をしていなかったと断言はできない。しかし、この近距離で存在の有無が確かめられない人材に着席を赦すほど《六王》は甘くはないのだ。

思わず息を詰める少年に対し、路地裏からの声はその沈黙を肯定ととったのか、さして気にした様子もなく言葉を続けた。

「余計なお荷物も増えているが、まぁいい。急げ、BoBの選手登録の締め切りはもうすぐだ」

声自体の声量が小さく、ところどころ掠れて聞こえにくいが、かろうじて渋い男の声だということが分かった。

さらにこの極端な影の薄さ。あの酒場で突然現れ、チケットを置いてすぐに消えたあの灰色のフーデッドコートの男に間違いはないだろう。

声だけの相手にムッとした表情を隠すこともなくレンは路地の奥に顔を向ける。

「……おじさんも急がなくていいのぉ?出るんでしょ、BoB」

「………………」

押し黙った声に
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