第2章 ヘンシェル星系攻防戦 前編 血塗られた赤土
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すると彼は
「黙れ逆賊。貴様のような裏切り者に用はない。
だが、私が無名で死ぬというのはわが家が許さないのでな。
貴様が貴様の面白くもない人生の回想録をもしバカみたいに書いた時に名前が載ってれば、あのくそ浮気女たらし親父も少しは泣いてくれるかな。
私の名前は、ルーカス・フォン・ゼークト准尉だ。つい半年前に帝国軍幼年学校を卒業したての若造だ。おれはただの三男坊で面白くもない人生を送る予定だったが、何とか面白く終わってくれそうだ・・・・」
と言って、ゼークト准尉はそのまま、息を引き取った。
私は初めて、人の死に直面した。自然と涙がこぼれてきた。
自分が導いた結果なのに、こうして最期を看取ると無情に悲しい。
そのあと1分近くその場に立ち尽くしていたが、おやじの怒鳴り声と補給物資の爆発音で目が覚めた。時刻は0600時であった。
結果として任務は成功。これにより敵は弾薬物資を失い宇宙港へのその日の攻撃作戦を断念した模様であった。
私たちは、毎日のようにこのような襲撃作戦を繰り返し敵にストレスを与え続けた。
ただ、あの2件は別だが。
しかし、このような攻撃作戦が行えたのも最初の10日間が限界であった。
それ以降は、徹底した防御線に回らざるを得なくなるくらい敵の攻勢が激しくなっていたのだった。
そんな時攻防戦開始から2週間目。来ると思われたオリオン星系区からの援軍から入電で
「我、オリオン星系第9ブロックにて敵艦隊と遭遇す。これと交戦状態なり。」
とのことだった。また、ヘンシェル星系区司令部発進の無線を傍受したところ、
「我、全星系区にて帝国軍の攻撃を受けつつあり、救援を要請する。」
つまり、この辺境ヘンシェルの星系区内の惑星ないし衛星群が同時多発的に攻撃を受けたということになるし、オリオン星系区からの救援を阻むことのできる規模の艦隊がこの狭い星系区に展開していることになる。
この先お先真っ暗だと思っていた。
弾薬も少ない、医薬品も少ない状況で私たちはライフルを打ち、トマホークをふるってきた。ついこの間は、1日だけで53人もの擲弾装甲兵をやっつけた。
しかし、敵は減っても減っても日に日に増える。
そして今目の前には敵の2個師団分の装甲擲弾兵、装甲車、我が物顔で上空を飛び交うワルキューレ。私たちは、こののちに血みどろの「ヘンシェル星系攻防戦」で最も血みどろと言われた「ポイント3−B1防衛戦」になる戦闘の前であった。
宇宙歴789年7月初めのことである。
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