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木場祐斗がもし聖剣計画を達成できていたら

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し。

 それは歪であったがあらゆる壁を越えて団結し狂信し推進する人類と言う名の一個の生物となった瞬間だった。
 始まりは些細なものだった。少なくとも、人類全体にとっては些細だった。
 ある者には英雄とも讃えられ、ある者には類稀なる人格破綻者と称されるバルパー・ガリレイ。

 彼は、聖剣に魅せられていた。子供の頃に読んだ聖剣の物語を忘れられず、なんども読み返す。お伽噺だとは思っても、想わずにはいられないほど魅せられた。
 聖剣の為ならどんな事でもする、そんな男だ。そんな男が、この現実に聖剣が存在するとしたら、彼がどういう反応を取るか誰でも理解できるだろう。

 ――――聖剣をこの手に。
 ――――至高の聖剣を、この手に。

 そして狂気的とも思える聖剣に執着し、再現し創造しようと行動した。

 ――――誰が死のうとも構わない。
 ――――聖剣を、この手に至高の聖剣を。
 ――――あのお伽噺を現実のものとして再現しよう。
 ――――いや、再現では生温い、この私が聖剣の物語に新たなページを加えてやろう。

 他者を顧みず己の欲望に取り付かれ万進した。だがそれは他の者には、人間を襲う人外(わるもの)を退治しようと頑張る男として見えた。そして、男の狂気は熱狂へと移り変わり人類を覆った。たった一人の大司教が動いたことにより、段々と教会そのものが人外排斥組織へと転じていった。

 それから一年が経ち、数々の非道な行為を続けた組織は潰れた。まだ何個は残っているだろうが、それでも一番大きな支部は潰れて熱狂も冷めた。再び世界に秩序が戻り、実験をするにしても一線を越えないようちゃんと法律も作られた。

 そして人類は、悪魔、堕天使、天使とも対等に戦えるだけの力をつけた。たった一年で、数十万年生きてきた種族と対等に戦えるだけの力を付けたのだ。地力で劣っているにも関わらず。
 それだけで人類がどんな方法に手を出したか、分かるだろう。そして人間の世界に秩序と法は訪れたが、まだ聖剣に心奪われた男(バルパー・ガリレイ)は捕まっていない。
 まだ彼は――――。



「――――生きている。聖剣を求めている。数少ない仲間と共に、聖剣の物語を紡いでいる」

 パタンと絵本を閉じて、僕は視線をベットでゴロゴロしている女性に向ける。

「これが人間がここまで発展した理由を纏めた本なんだけど、人外としてみて黒歌(くろか)はどう思う?」
「一言でいうと怖い、かな。どこにでも狂信的なヤツはいるけどそれでも随分と限定的だからにゃー、一時的にとはいえ自分も含めた種全体を捧げようとするのはやっぱり珍しいにゃん」

 黒歌。
 SS級のはぐれ悪魔。黒漆しの髪に黒い着物。男を魅了するであろう魅力的な体。ベットでごろんと寝っ転がってい
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