第一章
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ガウチョスタイル
チリは非常に南北に細長い国だ。そして海に面している場所は多いがそこから東に行くとすぐにアンデス山脈だ。
それはイキケでも同じだ、それこそだ。
街を出て東に向かえばすぐに山だ、平地は少ない。
それでイキケの高校に通っているホセ=リベラもだ、苦笑いになって学校で言うのだった。
「うちの国はスリムだよな」
「ああ、痩せ過ぎだよ」
「ひょろ長いにも程があるよな」
クラスメイト達も彼に応えて言う。
「モアイみたいだよな」
「そうそう、顔が異様に長いな」
「モアイは有名だけれどな」
「国の形までモアイだよ」
「しかも海からちょっと行くとな」
そしてというのだ。
「もうそこはアンデスだよ」
「平地欲しいな、本当に」
「海と山ばかりかよ」
「細長いのも考えものだぜ」
「あまりいいものじゃないな」
「全くだよ」
クラスで自国の地形についてぼやくのだった、そして。
カルロスは自分自身も見た、やや褐色の肌にはっきりとした睫毛の長い黒い目、はっきりとした唇に高めの鼻と黒く癖のある天然パーマの髪はメスティーソの典型と言えた。背は高いが痩せている。それでだった。
家でもだ、こう言うのだった。
「俺本当にチリ人だよ」
「痩せていて背が高い」
「だからっていうんだな」
「実際そうだろ、親父も兄貴達もな」
こう家族にも苦笑いで話すのが常だった。
「背が高くて痩せているだろ」
「まあな、俺達もな」
「確かにひょろ長いさ」
「実際にな」
その父と兄達の言葉だ、尚母親は小柄だ。
「だから似合う服もな」
「選ぶな」
「これが中々難しいな」
「そうなんだよ、下手に背が高くて痩せていたら」
つまりひょろ長いと、というのだ。彼は。
「いい服見付けるのも大変だよ」
「本当にな、何かとな」
「そうしたこともな」
「探すのが大変だな」
「何かないのかね、俺にも似合う服」
ホセはぼやきもした。
「祖国そのもののこの俺のスタイルにもな」
「あるぞ」
ある日だ、その彼にだ。
たまたま家に来ていたかつてアンデスで牛飼いをしていて今はイキナの外れで牛皮職人をしている彼の祖父のフェリペが言って来た。ホセがそのまま歳を経た様な体型だ。ついでに言えば顔立ちもそんな感じだ。
その彼がだ、ホセにこう言ったのである。
「誰にも似合う服がな」
「あるのかよ」
「ああ、勿論御前にもな」
「そんな服があるんだな」
「だから御前にも言ってるんだよ」
フェリペは自分の孫に強い声で言った。
「こうしてな」
「へえ、じゃあそれはどんな服だい?」
「古い服だがいいか?」
「古くても何でも似合えばいいさ」
これがホセの祖父への返事
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