第七十六話
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不覚というべきか。
「ま、大丈夫ならいいけどね。それに、今回は遅刻のことも許す!」
「なんだ、今日は――」
今日は太っ腹だな――などと軽口を叩こうてした時、俺はリズとその背後にあった景色に心を奪われ、その言おうとした言葉を途中で失った。色とりどりの美しい妖精たちの飛翔する舞と、その中央に出現している――浮遊城《アインクラッド》。二度と見ることはないと思っていた浮遊城は、これからは妖精たちの遊び場と化すのだろう。
……デスゲームなど関係のない、本当にただの遊び場として。
「綺麗だ……」
「ね。これが見れたから、今回の遅刻は不問よ」
こぞって浮遊城に行こうと飛翔する、誰もが一番乗りを目指している各陣営の妖精たち。その舞の一番頂点にいるのは、緑色を基調とする女の風妖精――二番手に黒色の男妖精がいるが、それすら比べるまでもなくぶっちぎりだった。
「……ところであんた。ぶっ倒れてた時のこと、何も覚えてないの?」
リーファも吹っ切れたらしいことを確認すると、隣に浮かんでいたリズがそう聞いてきた。それが不思議なくらいに何も覚えていないのだが、もしかして何かやってしまったのだろうか……?
「ううん、覚えてないならいいの! そ、それよりさ、あんた、本当にそうなってよかったの?」
俺の不安そうな顔を見て何か悟ったのか、リズの不自然なほどに怪しい話題転換。自分が何をしたか問い詰めたいところではあるが……リズが答えてくれそうもないので、あえて話題転換に乗ってやることにする。
「これじゃなきゃ、リズベット武具店の助手は務まらないからな」
……俺は旧SAOのデータをコンバートするにあたって、世界樹攻略戦をともに戦ったシルフ族ではなく、リズと同じくレプラコーン族を選択していた。レプラコーンはシルフほど服装や外見に影響がなく、少しいつものコートが赤みを帯びている程度だった。
「それに、あの金髪はもうコリゴリだ」
「あのお坊ちゃん面もお似合いだったわよ?」
金髪オールバックの俺のアバターと、子供用の服がピッタリなリズのアバターを思いだし、ついつい2人で苦笑してしまう。二年間のアインクラッドの生活のせいで、こっちの身体の方でないと落ち着かなくなってしまっていた。
それと同時に、アインクラッドでのことも思いだす……今も隣にいる彼女がいなければ、とても生き残れなかったあのデスゲームでのことを。
「それじゃ、あたし達もそろそろ行きましょうか!」
「……リズ、待ってくれ」
「なに――!?」
妖精たちの舞に加わろうと飛翔しようとしたリズを、呼び止めながら後ろから抱き止めた。リズは驚いて抜けだそうと抵抗しようとするが、筋力値を総動員して逃がさないようにする。
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