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SAO−銀ノ月−
第七十六話
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議と愛嬌のある笑顔で「分かってる分かってる」と言いたげに微笑むのみだった。……アインクラッドの時から、この店主はとにかくお節介な。

「そうそう、オメェ言ってたろ? 事件が終わったら告白する、ってよぉ」

 もう一度、何の話だ――と惚けようとしたものの、クラインが言っていたことを俺ははっきりと覚えていた。あのアインクラッド最後の層となった75層で、今と同じようにクラインとエギルに問い詰められた時のことだ。

『明日も分からない状況でそんなことは出来ない』

 ……確か、俺の返答はこんなニュアンスのものだったと記憶している。その時は『真面目な奴だ』などとからかわれただけで終わったが、SAOに続いてALO事件も終わった今は、その『明日も分からない状況』だろうか。

「いいじゃねぇかヤっちまえよー。さっきなんて、オメェが直葉ちゃんとイチャついてたから、わざわざ割り込んだんだぜ? 可愛いもんじゃねぇか」

 そう言いながら肩を組んでくるクラインに、俺は何も言い返すことは出来なかった。酒臭いだとか酔ってるなだとか、言い返す言葉はいくらでもあるはずなのだが。

「その辺でやめてやれ、クライン。ま、何事も後悔しないようにな」

「……勘弁してくれ……」

 エギルの助け舟のおかげでクラインが離れていき、俺が何とかそれだけの台詞を絞り出した。そしてエギルから差し出されたおかわりのグラスを、ヤケクソのように一気飲みしようとし――

「バッオメェそれは違っ――」

 ――クラインのいつになく慌てた声と味、そして慣れない何かが身体中に駆け回っていく感覚で、俺は自分で何をしたのか悟る。まるで身体に回したこともないアルコールを、心構えもなく一気飲みする……という自殺行為。

 ……薄れいく意識の中で最後に思ったことは、なんていうことも起きず。俺はそのまま意識を失っていき、一緒に差し出されていた烏龍茶をこぼしながらカウンターに突っ伏した。

 ――《新生アルヴヘイム・オンライン》。新生といっても、この風を切って飛翔する感覚までは変わらない。立ちこめていた雲を貫くと、俺はようやく彼女が待つ目的地に着いた。

「ショウキ! ……大丈夫?」

 こちらを見た瞬間、少し寂しげだった横顔がパァァッと明るい笑顔になったが、すぐにその顔に影が差してしまう。

「リズの看病のおかげで平気。本日二回目の遅刻、悪いな」

 ……《ダイシー・カフェ》で誤ってクラインの酒を飲んで気絶した後、エギルとクラインに秘密裏に店の裏まで連れて行かれ、みんなには知らせずにそこで休ませていたらしい。ただし、二人の大人のお節介からリズには伝えられ、その看病のかいもあって二次会までに回復できていた。……その看病のことをまるで覚えていないのが、怖いというべきか、
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