第七十六話
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予想外だったのか、直葉は少しの間だけキョトンとした表情になる。もちろん和人にそんなことを言っている訳もなく、直葉は「言ってないけど……」と弱々しく返してきた。
「今日の二次会。そこで和人に言ってみてくれ。きっと、答えが出てくるからさ」
この後に控えている『新生ALO』での二次会。もちろん俺や桐ヶ谷兄妹も参加をしている筈だが、どうやら直葉は二次会で何があるか知らないらしい。そう言われた直葉は、言葉の意味をゆっくりと理解するように数回反芻し、しばし後に小さく吹き出した。
「翔希くん。それ、お兄ちゃんに丸投げしてるだけじゃない」
何かかっこいいこと言っといて――と直葉は笑いだす。そこでようやく持ってきた飲み物を飲むと、エギル特製のジンジャーエールの辛さに顔をしかめた。……俺は一緒に持ってきた烏龍茶でお茶を濁しつつ。
「……うん。でもありがとね、翔希くん。ちょっと気が楽になったよ!」
『コラー! そこの二人、隅っこでイチャついてない!』
直葉に「どういたしまして」とでも返そうとした瞬間、スピーカーから俺たちに声がかけられる。声を聞くまでもなく、マイクを持っているのは里香しかいない、というか何でマイク持ってるんだ。呆れながら里香の方を見ると、明日奈に桂子と話し込んでいたらしく、直葉に向けて手招きをしている。
「……ふふ。じゃ翔希くん。何か呼ばれてるみたいだから!」
「ああ、それじゃ」
小走りで直葉が女子会――とでも言うのだろうか――に混じっていくのを眺めた後、野次馬に囲まれる前に素早くその場を離脱する。マイクで名指しされたせいで少なくない数の人の目が集まっていたが、俺は何もしていないし何の関係もないんだ――と、人目が少ない場所に移動する。
「よぉ、いらっしゃい」
「モテる男は辛いってか? くたばれ」
行き着いた先は店のカウンター。他の面子は歩き回りながら積もる話をしているようで、今カウンターにいるのは店主であるエギルと、明らかにアルコール由来の飲み物を飲んでいるクラインだった。
「……誤解だから、そっちがくたばってくれクライン」
ついでに持っていた烏龍茶を一気に飲み干すと、エギルにおかわりを頼みつつカウンターに座る。やはりクラインが飲んでいたのは酒だったらしく、ほのかに鼻につく匂いが漂ってきた。
「まあオメェはリズ一筋だもんなぁ。お、エギル。俺にも頼むわ」
俺と同じようにグラスをエギルに渡しながら、クラインはいきなりそんな発言をぶち込んでくる。ついつい椅子から落ちそうになってしまった俺に、さらに店主から追撃が叩き込まれた。
「ああ、いつ告白するのか気になっててな」
「何の話だ……」
エギルに聞き返すものの薄く笑うだけで何も言わず、不思
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