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SAO−銀ノ月−
第七十六話
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ンに背中を押され、俺はバランスを崩してそのままステージへと上ってしまう。背後を睨んでみると、ガッツポーズをするクラインの姿――どうやらドッキリを仕掛けられたのは、和人たちだけではないらしい。

「おい翔希、どうなってるんだ」

 いきなりステージに上げられた俺に、困り顔の和人が問いかけてきた。困り顔になりたいのはこっちだと、ついつい髪に手を置いてしまう。

「もう。和人くんに翔希くん、こういう時は堂々としてなきゃダメだよ? もちろん直葉ちゃんも」

 すっかりこういうことには手慣れているらしい明日奈に窘められ、俺と和人は顔を見合わせて苦笑いする。仕方なしに背筋を伸ばして堂々と立つと、先程和人を襲ったクラッカーの絨毯爆撃が再び襲来してきていた。

『SAOクリア、おめでとう!』

 ……二発目のクラッカーのことは聞いていない。甘んじて俺と和人はその爆撃を受け止め、発射された紙まみれになっていた。

「酷い目にあった……」

 それから一人一人インタビューという名の吊し上げが始まったり、和人が多少修羅場になったりと
あったが、少し落ち着き。まだ他のプレイヤーに取り囲まれている和人に明日奈はともかくとして、俺はそこそこにステージから目立たぬように降りていった。適当な飲み物を一つ拝借すると、視界の端に一人の少女の姿が写った。

「よ、直葉。どうしたんだ?」

「あ……翔希、くん」

 俺と同じように直葉もステージから降りていたらしく、店の隅で所在なげに1人で佇んでいた。適当に持ってきた飲み物をもう一つ渡してやると、近くにあった椅子に直葉を連れ添って座る。

「里香め……俺まで巻き込んで……直葉も巻き込まれて悪いな」

「ううん、ちゃんと驚いたけど楽しかったよ。でも、さ……」

 直葉はかつてのSAOプレイヤーたちに囲まれる和人の方を見ながら、少し寂しげに小さく笑う。俺が渡した飲み物にも口を付けようとせずに、そのまま独り言のように小さく呟いた。

「何だかお兄ちゃんが、みんなが遠いよ。私、ここにいていいのかな……」

「…………」

 答えなど求めていないにもかかわらず、誰かに問いかけるような直葉の感情の吐露。自分だけあのアインクラッドのことを知らない、今の和人を作り上げているのはアインクラッドの日々。ならば自分がいる資格はないのではないか、という直葉の心からの言葉。

「あっ……ゴ、ゴメンね、こんなこと言っちゃって! せっかくのオフ会、なのに……」

 そんなことはない、一緒にいた方が楽しい――などと言うのは簡単だが。あまり見せることはない弱音を見せてくれた直葉には悪いが、それを言う資格があるのは俺じゃない。

「……それ、和人には言ってみたか?」

 俺からそんな返答がくることは
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