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SAO−銀ノ月−
第七十六話
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された二つの事件は、とりあえずの解決を迎え、問題になっていたSAO未帰還者の意識も回復していた。幸いにも須郷が行っていた実験の影響はないらしく、アインクラッドをクリアした後からの記憶はないそうだ。このSAO対策支援学校にも、少ないながら未帰還者だった者たちの人数は増えてきている。

 須郷はあの決戦の後に和人を現実世界で襲い、逮捕。その非道な実験も白日の下晒され、今はどうしているのか分からない。その消息に興味もないが、あの決戦で俺に洗脳が効かなかったのはどうしてか、ということだけは気になり、その件についてだけは菊岡さんへと連絡を取った。

 なんでも。須郷が実験体にしていたのは、SAO未帰還者に対してのみなので、ナーヴギアでのデータしかなく。《アミュスフィア》でログインしていた俺に対しては、少しばかり時間がかかり、その間に俺が殴り飛ばしたということらしい。……今度こそ安全、などという売り文句も、なかなか間違ったものではないらしい。

 結局彼は、キリトやアミュスフィア、レクトなど――彼が見下していたものに負けたのだろう。

「遅ーい」

 耳に聞こえてきた不満げな彼女の声が、俺を現実に引き戻す。どうやら、考え事をしている間に食堂へと到着したらしく、気が付くと俺は人が溢れそうな食堂にいた。そんな俺を外が見える一等地を確保しつつ、二人の少女が待っていた。

 ……俺たちは二つの事件を乗り越えて、こうして支援学校に通っていた。

「そうですよ翔希さん。私、もうお腹ペコペコです!」

「悪い悪い」

 席を取って貰っていた里香と珪子にお礼を言いつつ、里香に頼んでおいたランチが置いてある席へと座る。ひとまずコーヒーを飲んで一息つき、食堂から丸見えの中庭を望むと、桐ヶ谷夫妻がイチャついてるのが見えた。

「…………」

「翔希は和人の奴誘ってリハビリでしょ。最近ずっと頑張ってるわよねー」

 それを、微笑ましいような恨めしげなような羨ましそうな表情で見つめている珪子を、俺と里香はあえて無視することにすると、食事を食べながらの世間話に移行していく。珪子は俺たちが食事を食べ始めたところで、ようやく我に返ったらしく、忙しなくサンドイッチを食べ始める。

「そうでもないさ。里香こそリハビリはもういいのか?」

 確かに先述の通り、須郷の洗脳の実験体になっていたSAO未帰還者は何の問題もなかったが、直接その被害を受けた里香はそうはいかなかった。本人は大丈夫だと言っていたし、反射的に俺を殴りつけるような行動はなかったが、大事を取ってしばらく入院生活となっていた。経緯が経緯なので、俺が見舞いに行くことは出来なかったものの、随分と病室では退屈していたようだ。

「んー? 大丈夫大丈夫。最初っから悪影響なんてなかったんだし、ね」
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