第短編話 U
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と水面で手を重ね合わせる。体温と心音が伝わり合い――そんなはずはないのに――聞こえるのは風の音と鳥の鳴き声と、二人の心臓の音。
「ドキドキしてる?」
「……分かるだろ」
照れ隠しめいた俺の言葉に、彼女は不満げに口をとがらせる。わざわざ言わせなくても分かっているだろうに、そんなに言わせたいのか……と観念する。温泉の熱さ以外の原因で頬が熱くなるのを感じながら。
「……ドキドキするさ、そりゃ」
「あたしも。……ショウキの手、あったかいね。あんたの熱はあたしにとって、やっぱ特別みたい」
雲一つない今日の天気で顔を見せている、太陽のような笑顔で彼女は笑う。少し眩しい……けれどとても心地よい。この仮想世界で感じる体温や心音なんて、あくまでただの電子信号にすぎない。それでも、こうしていれば相手の心の温度を感じていられる――俺もリズも、そう信じている。
テーマ:水着。なべさんにリズベットのイラストを書いていただき、報酬の押し付けに行った作品ver2。死神……魔進チェ○サー……うっ頭が
『恋』
さて、どうしたものか……と。俺は平日の昼間から、ひとしきり悩む羽目になっていた。原因はただの一つ、俺の目の前にいるピンク……いや、今は茶色めいた髪の色をした少女のことしかない。
「…………」
「えーっと、リズ……じゃない、里香。何だ、どうした」
「…………」
特に何か用事があるわけでもない昼間、俺の前に現れた里香は、何も語ろうとはしなかった。ただこちらを眺めているだけで――時折睨めつけるような視線が痛い――何も語らず、ただ座っているだけなのだ。
「あー……」
「…………」
ただこちらをジッと見てくる里香の視線に耐えられず、つい癖である髪をクシャクシャと弄りつつ目をそらし、何か話そうとすると里香の視線が鋭くなる。……これは「お前も喋るな」ということなのだろうか。
「…………」
「…………」
仕方ないので、とりあえずこちらも黙ってみるが……数秒とたたずこの沈黙が辛い。特に、いつも騒がしいほどに明るい里香が、こうして黙っているという違和感に耐えられない。
何か悪いことでもしただろうか――と必死に記憶を漁り始めていると、中古のスマホから通知の連絡が届く。里香から目を離すついでに、その通知を慣れない手つきで確認すると、その送り主は和人。内容は……要するに『明日奈が黙っていて何も言わない、助けて欲しい』――どうやら同じ悩みを抱えているらしい。むしろ、こっちが助けて欲しいところだ……というか助けてくださいお願いします。
「……里香」
――などと、現実逃避をしている場合ではない。いい加減にしろ、と言わんばかりに溜め息混じりに語りかける。それでようやく里香も
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