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SAO−銀ノ月−
第短編話 U
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と同じように、ジャブジャブと音をたてて歩いている音を聞きながら、ふと俺は考えた。男子更衣室は男湯、女子更衣室は女湯にしか通じていない筈なのに、どうやって間違えたんだ……という疑問は解決前に中断される。

「キャッ!?」

 ――俺の背後で大きな水音をたてて、転ぶような気配と彼女の悲鳴――俺が反射的に背後を見て、転びそうになる彼女を支えるのに、充分な条件だった。だが、転んだ彼女は温泉に入っていた姿になったわけで、少なくともこちらが見ていい格好ではない筈だ。

 しまった、と思いながらも湯気が晴れていくのを止めることは出来ず、支えていた彼女の水着があられもなくさらけ出され……水着?

「ぷっ……あっはははは!」

 ピタリ、と止まる俺の手の中で、彼女の笑い声がこだまする。現実でも見たことのあるような水着を着て、ポカンとしているだろう俺の顔を見ながら。

「あははっ。あー、あんた顔、顔真っ赤よショウキ……ふふふ、裸だとでも思った?」

 笑いながらちょくちょく話すリズの話を要約するに。間違えたというのも嘘で、転びそうになって俺に支えられたのも狂言で、このためだけに水着で待機していたわけで。……そのことが分かるくらいに冷静になってから、初めて俺が取ることが出来た行動は、腹を押さえて俺から離れたリズに対し思いっきり湯をかけることだった。

「うぇっ!?」

 もちろん笑い続けていたリズの口の中にはお湯が直撃し、反射的に吐き出すような動作をしている。俺はその間にとりあえず頭を冷やすべく、温泉に思いっきり頭をつけていた。……熱いので逆効果なような気もするが、こういうのは気分によるものだ。

「ごめんごめん、ちょっとやってみたかっただけだって」

 温泉から頭を上げて心頭滅却を果たすと、まだ少し笑いが残っているリズの顔が隣にあった。その髪の毛の色に併せた、スカートが付いた赤系統の水着を着ており、温泉に入っているからかどこか艶っぽい。……確か、現実でホルターネック式のスカート付き水着、とか言っていたか。

「水着で温泉なんて邪道だけど、ま、ショウキの珍しい反応も見れたし……こうして一緒に入れるから、よし!」

「……それも、そうだな」

 ……一度落ち着いて、ゆったりとした温泉の感覚が、《死神》との戦いで疲れた身体に染み渡ってくる。VRMMOでの温泉は、温泉というより温水プールに近い物が多いのだが、ここはその中でも限りなく温泉に近い。

「ここはいい場所だな……」

「ふぃー……ね」

 肩程まで浸かる温泉だけでなく、その上を吹く風と見える木々も美しい。おおよそ現実離れした光景だとしても、再現できるのはこちらの世界に軍配があがるか。

「ね、手……握っていい?」

「……ん」

 隣り合わせの彼女
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