第短編話 U
[6/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……これが《死神》の隠し玉。左手をかざした相手の動きを極端に鈍らせる、という回避方法も分からぬ必殺技。どうするか、と考えながら立ち上がると、《死神》もまた俺の前に着地する。その背中にはコウモリの羽はなく、クローアームのように変容した右手は元の右手に戻っている。破壊した左手の鞭はともかく、《死神》は突如として全ての武装を解除する。
『Execution……Full break……!』
もちろん見逃してくれる――という訳ではなく、《死神》から発せられたその音声とともに、《死神》のもとに両手持ちの大斧が出現する。一目見て巨大かつ鈍重だと分かる大斧だったが、《死神》は何でもないかのように軽々と扱ってみせる……恐らく、アレが《死神》の鎌のようなもの。罪人を地獄に送る必殺の武器。
「俺はリズと……温泉に入るんだ……!」
それでも負けられない理由がある。日本刀《銀ノ月》の柄に付けられたボタンを押すと、刀身が小刻みに音をたてて振動していき、さらに切れ味を増していく。ただ切り裂くのではなく、超振動によって生ずる高周波によって物体を切削する、振動剣とも言える物へと姿を変える。この日本刀ならば、あの《死神》のボディとて斬り裂ける。
『…………』
「……《縮地》!」
チェーンソーのような音をたてる日本刀《銀ノ月》を警戒しながら、大斧を構えた《死神》がこちらに向けて左手を構える。……が。その一瞬先に、こちらは高速移動術《縮地》により、《死神》の死角を高速で走り抜ける。俺を見失い周囲を索敵する《死神》に対し、俺はさらに翼を展開すると、空中へと羽ばたき《死神》の視界から外れ、再び上空からの一撃必殺を狙う――
『――――!』
――という選択肢は間違いだった。二度も同じ手は通用しない……とばかりに、《死神》は上空に目を向ける。それが出来た理由は、音。日本刀《銀ノ月》を振動剣にさせた際に生じた音が仇となり、その小さいながらも確実に発せられている音を頼りに、《死神》は空を向いたのだ。
……そして《死神》の視界に入ったものは。翼を展開して飛翔するショウキではなく――日本刀《銀ノ月》そのものだった。
「……ハズレだ」
ショウキは空中になど飛んでいない。ただ、地上で《死神》の死角へ高速移動を繰り返していたのみ。《死神》が聞いた振動剣の音は、わざとショウキが聞かせていた音であり……空中に投げられた日本刀《銀ノ月》そのものだった。
ショウキは《死神》の反応よりも早く、その身体を足場にして頭に膝蹴りを――俗にシャイニングウィザードと呼ばれる技を――叩き込み、その衝撃で空中へ浮かぶと、即座に翼を展開する。崩れ落ちる《死神》を前に展開した翼を器用に使い、反転……その勢いのまま再び蹴り上げる。《死神》が左手を上げよ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ