第短編話 U
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しまったクナイは何十本あったか――風とともに襲う無数のクナイに、《死神》が初めて驚愕の色を見せる。
『Tune……Bat……!』
「……そこだ!」
コウモリの羽から放たれた拡散するエネルギー波に、地上から放たれたクナイは全て撃墜されてしまうものの……その隙をついて、俺は蜘蛛の鞭の拘束から脱却する。翼を展開して一回転すると、再び風魔法の詠唱をしながら日本刀《銀ノ月》の柄を握り締める。
「抜刀術《十六夜――鎌鼬》!」
抜刀術の勢いで風魔法を発射し、全てを切り裂くカマイタチと化す――こちらの最大威力を誇る、実質的な切り札が放たれる。カマイタチは蜘蛛の鞭を切り裂きながら、《死神》の本体をも真っ二つにせんと向かっていく。
それに対して《死神》が取った行動は、蜘蛛の鞭を左手から取り外して逃げること。蜘蛛の鞭を犠牲にしながらも、そのコウモリの羽でさらに上空へ飛翔することで、横一線全てを切り裂くカマイタチから逃れる――
「取った!」
――しかないと分かっていた。
カマイタチに意識を集中させていた俺は、既に《死神》の真上に飛翔していた。どうしても真上という人型故の死角から、《死神》といえども反応が遅れてしまい、コウモリの羽からエネルギーを放とうとするも遅い。日本刀《銀ノ月》は《死神》の首へと添えられており、容赦することなく首を切り裂いていく。そのメカのような外見に違わず、《死神》のボディは日本刀《銀ノ月》の切れ味を持ってすらも、多少斬りづらかったものの……あくまで多少。このまま首を切り裂く――
「なん…………だ……?」
――為に力を添えているにもかかわらず、中ほどから全く刀身が進まない。《死神》の身体が硬質化したか、俺の力が弱まっているのか、それとも日本刀《銀ノ月》に何か異常が――と、様々な考えが頭の中をよぎったが、どれもこれも間違いだ。正解は……俺の動きが遅くなっている。
『…………』
動きが遅くなった俺とは違い、《死神》は何ら変わらない動きで脱出し、逆に俺の首にクローアームを向け――る際、俺の動きが元に戻り、何とか《死神》を蹴りつつ離脱する。……日本刀《銀ノ月》で首を切り損ねた際に気づくべきだった。恐らく、その時には既に俺の動きは遅くなり始めており、日本刀《銀ノ月》は十全な威力を発揮していなかったのだろう。
「く……っ……!」
ひとまず距離を取ろうとする俺の動きが、《死神》が左手をかざした瞬間、再び遅くなってしまう。風や草花、《死神》自体の動きはそのままであり、俺の動きだけが遅くなってしまっている……!
「ぐあっ!」
クローアームから放たれた球体のエネルギー波が、今度こそ俺に直撃……爆発四散したその衝撃で、俺は受け身もままならず地上へと叩きつけられる。
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