第十六話 探り合い
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
戦力は圧倒的にこちらが優位なのだ。帝国軍がそれを知れば撤退する可能性は高い。
それでも一応は勝利と言える。しかし出来る事なら戦って敵にダメージを与えたうえで撤退させたい。ここ最近同盟軍は劣勢にある。そのイメージを払拭させたいと軍、政上層部は考えているのだ。
私もその考えに賛成だ。そして敵の司令官、ブラウンシュバイク公が極めて厄介な敵であることは分かっている。出来れば彼を敗北させたい。それによって彼の発言力を弱めたい、そう思っていたのだが……。
ブラウンシュバイク公か……。厄介な相手だ、油断は出来ない。ヴァンフリートでもイゼルローンでも彼にしてやられた。ドーソン司令長官は武勲を挙げる事に逸っているが非常に危険だ。最悪の場合は無傷で撤退させることで良しとせざるを得ない、そう考えていたのだが……。
同盟軍本隊がワルキューレによる接触を受けたのは一月五日になってからだった。向こうもこちらの戦力は把握したのだろう、イゼルローン要塞方面に向かって撤退を始めた。両軍の間の距離を考えれば追撃しても届かない事は分かっていたがドーソン司令長官は追撃を命じた。
敵を追ったという事実が欲しかったのだろう。報告には撤退する敵を追ったが逃げ足が速く捕捉出来なかったと書きたいに違いない。詰まらない見栄だが分からないでもない。本来ならそれで終わるはずだった。
問題は帝国軍が素直に撤退しなかった事だった。こちらが追えば逃げ、こちらが引き返せば追い慕ってくる。もう既に五日も遊んでいるかのような行動を取っている。両軍の距離はごく普通に接近すれば一日で至近となる距離だ。
「皆、どう思うか? 忌憚ない意見を言ってくれ」
私の言葉に参謀達が意見を述べ始めた。
「帝国軍は我々をこの場に引き留めようとしているのではないだろうか。或いは本国に増援を要請したのかもしれない。二個艦隊も呼べば十分に我々と戦える」
何人かが頷いている。一理あるだろう、帝国軍の動きは我々をこの場に引き留めようとしているように見えるのは確かだ。
「そうだとすると増援を呼んだのは何時だ? 我々と接触してから呼んだのであれば増援が来るのは最低でも四十日後ということになる」
「……」
「このまま追いかけっこを四十日も続けるのか? そしてその後で戦闘? 馬鹿げている、その内燃料切れで動けなくなるぞ。有り得ない、非合理だよ」
これも道理だ、何人かが顔を顰めた。
「……増援を呼んだのはもっと前の可能性も有るだろう」
「ならばイゼルローン要塞で合流すればよいではないか。我々と接触し各個撃破される危険を冒す必要は無い」
「……」
参謀達が押し黙って顔を見合わせている。あまりいい状態ではないな、方向を示す必要が有るだろう。
「つまり増援は無い、その可能性が高いという事か?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ