第十六話 探り合い
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ーンからヴァンフリート、そしてアスターテ……。最短距離でこちらに向かっている、にも拘らず帝国軍の動きは遅い。そして接触したのは艦隊ではない、ワルキューレ……。明らかに索敵部隊だ、艦隊はさらに後方にいるだろう。
「妙、だな。動きが遅い……」
グリーンヒル参謀長の呟きに皆が頷いている。
「援軍を呼んだという可能性は無いでしょうか。それを待っていて動きが遅くなった」
私の言葉に皆がまた顔を見合わせた。
「増援だと?」
ドーソン司令長官がこちらを睨んだ。目が血走っているし頬がひくひくしている。いけ好かない部下が面白くない事を言った、そんなところだろう。意見具申など二度としたくなくなる対応だな。うんざりするがこれも給料分の仕事だ。全くなんで軍人なんかになったのか……。
私の指摘に答えたのはグリーンヒル参謀長だった。
「可能性は有るな。向こうにとっても負けられない戦いだ。……司令長官、スパルタニアンに索敵をさせましょう。先ずは敵の戦力を確定しないと」
「うむ」
ドーソン司令長官が苦虫を潰したような表情で許可をだした。面白くないのだろう、帝国軍に増援が有れば当然だが勝算は下がる。だからと言ってこちらを睨まないで欲しいものだ。私が増援を呼んだわけじゃない。大体増援がいるかどうかも分からない、私は可能性を指摘しただけだ。
グリーンヒル参謀長が指示を出しスパルタニアンが発進して行く。敵の存在が確認できた所為だろう、艦橋に活気が出てきた。
宇宙暦796年 1月10日 同盟軍宇宙艦隊総旗艦ラクシュミ ドワイト・グリーンヒル
「帝国軍、こちらに向かっています」
オペレータの声が艦橋に響く。またか……。
「一体帝国軍は何を考えているのだ! 戦うのか、戦わないのか!」
ドーソン司令長官が指揮官席で頬を震わせながら怒鳴った。もう何度目だろう、参謀達は皆白けた表情で黙って聞いている。そしてその事が更に司令長官を苛立たせている。困ったものだ。
「落ち着いてください、閣下」
「落ち着けだと!」
ジロリとこちらを見た。まるで私が敵であるかのようだ。うんざりだが参謀長として言わねばならない。
「敵はこちらを挑発しているのです」
私の言葉にドーソン司令長官がフンと鼻を鳴らす。溜息が出そうになった。
帝国軍索敵部隊とこちらの哨戒部隊が接触した後、こちらもスパルタニアンを索敵部隊として出した。その結果帝国軍はアスターテ星系とヴァンフリート星系のほぼ中間に居る事が分かった。敵兵力は約二万隻、現れるのが遅い事を除けば情報通りだ。おそらく周囲を警戒していて遅くなったのだろう。
敵の存在が分かった事でドーソン司令長官は全軍に前進を命じた。敵の索敵部隊と接触するまでに出来るだけ帝国軍に近づかなくてはならない。
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