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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第十六話 探り合い
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国軍の動向がまだ掴めないのだ。イゼルローン要塞を先月二十日に出立したという事はハイネセンからの情報で分かっている。フェザーンからの情報だから信じて良いはずだが……。

二十日に出撃したという事はもう二週間以上経つ事になる。本来ならアスターテ、ダゴン、パランティアの各星系に敷いたいずれかの哨戒網に引っかかっても良いはずだ。しかし何処からも未だ帝国軍発見の報告は無い、何かがおかしい。

情報が間違っているのだろうか? しかしフェザーンは同盟に勝って貰いたがっているはずだ。ここ最近帝国が優勢に戦いを進めている事にフェザーンが危機感を抱いているのは間違いないのだ。いい加減な情報を送ってくるはずが無い。時に同盟政府よりもフェザーンの方が同盟の安全保障に関心が高いのではないかと思う事も有る。となると何らかの事情で帝国軍の動きは鈍い事になるが……。

「一体何をやっているのだ帝国軍は!」
またドーソン司令長官が苛立ちの声を上げた。小刻みに体を揺すっている。逸っている、勝てるという思いが司令長官を焦らせているのだろう。ここで大きく勝てば自分を危うんでいた人間達を見返すことが出来る。元帥への昇進も有り得る、そう思っているのかもしれない。そして勝てるだけの条件は揃っている。

フェザーンからの情報によれば帝国軍は二万隻、一方の同盟軍は四万六千隻を越える艦隊がアスターテ星系の手前に集結している。内訳は第二艦隊一万五千隻、第七艦隊一万四千隻、第九艦隊が一万二千隻、そして司令長官の直率部隊が五千隻。圧倒的に同盟が有利だ。同盟軍は帝国軍に対し二倍以上の兵力を持っている。余程の事が無い限り兵力差で帝国軍を圧倒できるだろう。

ここで帝国に対し勝てるのは大きい。敗北続きの同盟にとっては士気を上げる事も有るが少しでも時を稼げるはずだ。そして何よりも帝国の実力者になりつつあるブラウンシュバイク公を敗北させるのだ。場合によっては失脚させることが可能かもしれない……。

帝国軍がまだ確認できないのは公が周囲を警戒しつつゆっくり進撃しているからかもしれない。或いは増援を呼んだのだろうか? 艦隊はまだイゼルローン要塞でオーディンからの増援を待っている? だとすると帝国軍の兵力はもっと多い事になる。有り得ない事ではない、負けることが出来ないのはお互い同じなのだ。

「哨戒部隊より連絡、我、ワルキューレと接触セリ!」
オペレータの報告に皆が愁眉を開いた。艦橋にホッとした様な空気が流れる。ようやく見つけた、そんなところだろう。所々で頷いている者もいる。妙なものだ、敵を見つけて雰囲気が明るくなるとは……。

「どの方面だ?」
もどかしそうな口調でドーソン司令長官が訪ねた。
「前方、ヴァンフリート方面です」
その言葉に皆が意外そうな表情で顔を見合わせた。

イゼルロ
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