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紋章
3部分:第三章
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第三章

「おじさん達悪い人達じゃないから。これで」
「まあ戒律は中立なんだけれどな。それでどうしたい」
「終わらせるわ。グルド」
「ええ、ビルギース」
 二人の髪が上がった。そして同時にそれまでよく見えなかった二人の頬が見えた。右頬も見えた。
 その右頬には同じ紋章が描かれていた。そっくりそのままの紋章が。それは二人の頬で白く輝きはじめていた。
「その紋章は・・・・・・何だ!?」
「これが私達の力」
 ビルギースは言った。
「全てを封じる紋章の力」
「封じるたって俺達は魔法なんか」
 如何にも使えなさそうな顔触ればかりであった。それは容易にわかった。
「封じるのは魔法だけじゃないわ」
 ビルギースはそれに応える形で言った。紋章の光はそのまま増し、やがて同じ色の光が二人の下に表われた。そしてそれはそのまま魔法陣を描く。
「何もかも」
 ビルギースは言う。
「そう、動きさえもね」
「動きって・・・・・・まさか」
「ええ、そのまさかよ」
 今度はグルドが応えた。
「動き、止めさせてもらうわ」
「その頬っぺたにあるのは魔法か」
「ええ、ちょっと変わった魔法でね」
 グルドは説明をはじめた。
「二人でないと使えないのよ、それも特別な二人でないと」
「双子でないと」
 ビルギースも言った。
「何っ、双子ってことはまさか」
「聞いたことないかしら、双子の戦士と魔法使い」
 グルドは言う。その間に魔法陣を描く白い光はそのまま陣全体を輝かせ、二人を完全に覆った。
 そしてすぐに辺りに光を飛ばす。それはそのまま盗賊達を貫いた。
「うおっ!」
「それがあたし達なのよ」
「そうかい、御前さん達があの」
「聞いたことあるみたいね」
「男勝りで口の悪い戦士と無口で無愛想な双子の女冒険者」
「・・・・・・何かあまりいい呼び名じゃないわね」
「けれど本当のことね」
 ビルギースはそれを聞いて頷いていた。
「口が悪いのも無口なのも本当だし」
「それを言っちゃお終いでしょ」
 グルドは姉妹の言葉に苦い顔をした。
「折角魔法を決めたのに」
「チィッ、動くことができねえぜ」
「だからそうした魔法なんだって」
 光が消え同時に魔法陣も消えていた。そして後には二人の周りを取り囲む盗賊達がまるで石像の様に立っているのであった。
「動けなくなる魔法だってさっき言ったでしょ」
「まさかこんなところで出会うなんてな」
「思わなかった?」
「おう、会う可能性なんて殆どねえからな」
 男は立ったまま言った。どうやら口だけは動く様である。
「噂通りで安心したぜ」
「まあ今夜はそのまま固まっていてね」
 グルドは構えを解きながら言った。既に髪の毛は下がり頬の紋章は隠れていた。ビルギースも同じである。

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