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藤村士郎が征く
第24話 凡夫の犬歯は、気高き名犬に届き得るものなのか
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ちは未だに決着時のままだった。

 「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
 「川神・・・・・・さん」
 「・・・・・・ふえ?」

 何とか呼吸が整ってきた時に、義経の呼ばれた一子は可笑しな声を漏らす。

 「いや、これからは一子さんと呼ばせてもらっていいかな?」
 「それ位、好きに、してくれて構わな、いわよ・・・?」
 「そうか。それにしても今回は完敗だった。まさかあんな戦い方をするだなんて、思いもよらなかったぞ?」
 「完敗?ううん、それは違うわよ?義経」
 「え?」

 一子は謙遜では無く、堂々と義経の言葉を否定する。

 「だって義経は、今日はもう、たくさんの挑戦を引き受けて疲れてたでしょう?それに比べてあたしは、万全だったうえに、義経の戦い方を見て戦術を考えていたんだもの。挑戦しといて何だけれど、こんなのフェアじゃないわ!」
 「だが、義経は・・・・・・」
 「いいの、これはあたしが勝手に言ってるだけだから!」
 「そ、そうか」
 「だから今日のは引き分け!またいつか戦いましょう、義経!」
 「あっ・・・・・・ああ!」

 2人はまるで、10年来の友人の再会を喜び合うように熱い握手を交わす。
 そんな2人の態度に、周りはいいモノを見たかのようにさらに興奮が高まる。

 「クリスは挑戦しないの?」
 「いや、この空気の中で流石に出来ないだろう?自分とて、空気位読めるんだ」
 「へーそれはすごいね〜」
 「そうだろ、そうだろ!」

 明らかに皮肉気味に言っているにも拘らず、エッヘンとでも言いたいかのように胸を張るクリスに対して京は、今度は生暖かい目を向けていた。
 そんな2人の後ろには、信じられないかのように見ていた別の2人が近づいていた。

 「まさか、義経に勝つなんてなんて。凄いなワンコ・・・!」
 「まぁ、確かにね・・・」
 (と言っても、あんな綱渡りの戦法は2度と義経には通用しないし、総合的にもまだまだ上なんだけどね〜)

 大和が素直に感心している横で、弁慶は身内贔屓じみな事を考えているが、例えそれが事実だとしても負け犬の遠吠えそのものだった。

 そんな若者たちを、1−Sの教室で完璧執事と謳われるクラウディオが見ていた。

 (確かにさまざまなハンデがあったとはいえ、義経様に勝手しまわれるとは・・・。流石は藤村士郎様の指導力です――――いえ、此処は素直にすべて承知の上で上を目指し続ける努力の天才、不屈と言う言葉が大変似合っていらっしゃる川神一子様の“諦めない強さ”に賞賛と敬意を送るべきですかな)

 心の底からの感情に、つい口元が緩んでいく。

 (確かに最近の若者たちは、多かれ少なかれ精神が腐るどころか病んでいる人達も目にしますが、川神一子様のように地道でも確
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